フィレンツェの大金持ち、ブオーゾ・ドナティの寝室。ブオーゾは息を引き取ったばかりで、亡骸を囲んで親戚の者が大げさに嘆き悲しんでいる。だが彼らの本当の関心事は、残された莫大な遺産の行方。ブオーゾの義兄のベットが、遺産はすべて修道院へ寄付されるという町の噂を一同に伝えると、彼らは祈るのを止めて遺言状を探し始める。するとリヌッチオが叫び声を上げ、救われた、遺言状だと羊皮紙の巻物を手に狂喜する。親類たちはこれを取り上げようとするが、リヌッチオはジャンニ・スキッキの娘ラウレッタと結婚させて欲しいと伯母のツィータに迫り、許しが出るまで遺言状は渡せないという。ツィータは仕方なく2人の結婚を許し、スキッキ父娘を呼びにやる。さてツィータが遺言状を読み上げると、案の定、やはり遺産は修道院に寄付されることになっていたので、一同はそれぞれ死んだブオーゾに悪態をつきながら、自分たちはとんだ世間の笑い者だわめき出す。
そのうち騒ぎが落ち着いて来ると、この内容を書き換えられないものかと、一同は思案し始める。するとリヌッチオが、それを出来るのはスキッキだけだと断言する。ほかの者は田舎者で成り上がりのスキッキを嫌っているが、リヌッチオはスキッキの人柄を讃え、愛と花香るフィレンツェを讃えるアリア、「フィレンツェは花咲く樹のように」を歌う。そこへジャンニ・スキッキの登場。ツィータが、持参金なしの娘とは甥を結婚させないと嫌味を言うので、スキッキは娘を連れて帰ろうとするが、若い2人は別れようとはしない。
結局ツィータは、遺言状をスキッキに見せ、この窮状を救って貰うことにする。当のスキッキは最初この申し出を拒絶するのだが、ラウレッタの「私の優しいお父様」という有名なアリアにほだされて、相談に乗ることになる。彼はラウレッタに席を外させ、ブオーゾの死が外部に漏れていないのを確かめ、彼の遺体を片付けさせて、スキッキ自身がブオーゾに成りすまし、新しい遺言状を書こうという寸法である。そこへ医者のスピロネッツィオがやって来て、ブオーゾを診察しようとするが、スキッキがブオーゾの声色を真似て、今は眠いので夕方に来てくれとベッドの中から告げると、医者はすっかり信用して帰ってしまう。そしてスキッキは自分の企みを明かし、リヌッチオを公証人のところへ走らせる。やがて公証人が来ると、スキッキはカーテンの陰に隠れて挨拶する。公証人はすっかり彼をブオーゾと信じて、新しい遺言状の作成を始める。スキッキはその前に、遺言状の偽造に関しては、共犯者もともども、手を切断の上追放という、フィレンツェの法律を引用して警告する。そして作成はいよいよ葬式の費用から、慈善事業への寄付、現金の分割法と進んで行く。そして問題の遺産である、ロバと家と粉挽き場の件になると、無二の親友ジャンニ・スキッキに贈与されると断言する。親類たちは驚いて罵声を上げるが、スキッキはそのつど「さらばフィレンツェ」と、先ほどの処刑されるという警告の歌を口ずさむので、沈黙せざるを得ない。最後にスキッキは、ツィータの分与分から公証人のお礼を弾むように命じる。公証人が姿を消すと、親類一同は泥棒めとスキッキに飛びかかるが、スキッキはわしの家だ出て行けと追い出してしまう。彼らは手当たり次第に、物を盗んで出て行く。やがて静けさが戻って、リヌッチオとラウレッタがテラスに現れ、フィレンツェを讃えながら抱擁を交わす。すると略奪されそうになった品物を持って、スキッキが戻って来て、愛し合っている恋人たちに微笑を贈り、やがて観客の方に歩み出る。コメディア・デラルテのエピローグのスタイルで、この財産処分のやり方はいかがであったでしょうかと、問いかけるところで幕になる。
(C) 出谷 啓

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