プロローグ
 14世紀のジェノヴァ。平民派であるパオロとピエトロが、街角で立ち話をしている。明日の総統選挙には、市民に絶大な支持のある、シモン・ボッカネグラを推挙することで合意する。シモンは貴族フィエスコの娘マリアと愛し合い、子供まで儲けたのに結婚を許されず、総統に選ばれたらそれも許されるかもと、選挙に出馬を決意する。一方のフィエスコは娘の過ちを許さず、城内の一室に幽閉していたが、彼女は病のために死んでしまった。フィエスコは苦悩に満ちたモノローグ、「悲しい胸の思いは」をうたう。城内からは彼女の死を悼む合唱が静かに流れ、モノローグに重なる。
 そこへシモンがあらわれ、フィエスコに和解を求める。だがフィエスコは恥辱は許さないが、子供を返すならば和解してもいいと答える。シモンの娘は既に行方不明になっているので、その話は決裂したまま、フィエスコは立ち去る。残されたシモンは、一目マリアに会いたいと思い、扉を開けて中へ入ってみると、そこに横たわっていたのは、冷たくなったマリアの亡骸であった。悲痛な叫び声を上げて飛び出して来たシモンを、フィエスコは物陰から憎悪に満ちた眼差しで見つめる。そのときシモンの名前を呼ぶ声が聞こえ、ピエトロとパオロを先頭に、松明を掲げた群集が、総統に選ばれたシモンを歓迎するために集まって来る。混声7部合唱で力強く、「シモン・ボッカネグラ万歳」と叫ぶ中で、シモンは湧き出てくる喜びと、限りない悲しみが、ともに彼を襲いかかったことを実感するのだった。
(C) 出谷 啓
第1幕へつづく
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