時と場所:13世紀初め。テューリンゲンのワルトブルク
【あらすじ】
〈序曲〉:おごそかな〈巡礼の合唱〉のテーマで始まり、中間部は一転して官能的な〈ヴェーヌスベルクの音楽〉となる。「ドレスデン版」では〈巡礼の合唱〉のテーマが力づよく再現して終結するが、「パリ版」では、中間部で〈ヴェーヌス讃歌〉が2度目に現れたあと、そのまま第1場の拡大された〈バッカナール〉に移行する
〈第1幕〉
第1場:テューリンゲンのアイゼナハ近郊、ヘルゼルベルクにあるヴェーヌスベルク。バッコスの饗宴が繰り広げられる(バレエによるバッカナール、ヴェーヌスベルクの音楽)。やがて狂騒が静まっていくと、海の精シレーネたちが呼ぶ声が聞こえる。
第2場:禁断の地ヴェーヌスベルクに長らく逗留している宮廷歌人の騎士タンホイザー(劇中では、もっぱら「ハインリヒ」という名で呼ばれる)は、快楽に溺れる日々に満たされないものを感じ始めている。それでも彼は愛の女神ヴェーヌスの誘惑に気持が揺れ、3度〈ヴェーヌス讃歌〉を歌うものの(節ごとに半音ずつ上昇していくが、本来のホ長調には達しない)、ついにその地を去る決意をする。ヴェーヌスは怒り、タンホイザーをののしるが、最後に彼が「僕の救いは聖母マリアのもとにある!」と叫ぶと、ヴェーヌスベルクは一瞬のうちに消え、場面は一転して彼の故郷であるヴァルトブルク郊外の谷間となる。
第3場:牧童の笛(イングリッシュ・ホルン)と春の女神ホルダを讃える歌が聞こえ、やがてローマに向かう巡礼の一行がやってくる(巡礼の合唱1)。それを聴いてタンホイザーは罪の意識にとらわれる。
第4場:静けさを打ち破るように遠くからヴァルトホルンの音が響く。テューリンゲンの領主、方伯ヘルマンと宮廷歌人の騎士たち一行が現れて、狩りの帰りにタンホイザーを見つける。彼らはタンホイザーが宮廷を去ったことの真意を追及するので、タンホイザーは彼らから逃れようとするが、親友ヴォルフラム・フォン・エッシンバッハのとりなしと「エリーザベトのもとに留まれ!」というひと言によって、タンホイザーは弁明をすることなく宮廷に復帰することになる。(C) 吉田 真
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