第2幕/芸術の殿堂(月の世界)
ペガサスに乗ったブロウチェクとエテレア姫は、星の形をした芸術の殿堂に降り立った。殿堂の主である魔光大王は、ヴィカールカ亭の主人ヴュルフルにそっくりで、「愛し合う二人を救ってください!」と言うエテレアの言葉に、温かく二人を迎え入れた。始めは見慣れぬ人物を恐れ隅に隠れていた月世界の芸術家たちも、次第に出て来てブロウチェクを歓迎する(皆それぞれにヴィカールカ亭に集まる芸術家たちに似ている)。詩人で雲の化身は詩を朗読し、作曲家で竪琴弾きは音楽家の仲間たちと演奏を披露してくれた。しかし芸術に興味のないブロウチェクはすぐに飽きてしまう。その上ヴィカールカ亭のボーイそっくりの神童が用意してくれた食事は匂いを嗅ぐだけ。しつこく嗅げと勧める神童に「自分の鼻はもう満足だ」と言うと、月世界では「鼻」という言葉は禁句なようで、皆不快な顔をして遠ざかる。好きでもないエテレア姫にもしつこく付きまとわれキスをされたが、彼女は父親の月森の化身がやって来て捕まえてくれた。画家である虹の化身が絵を見せ出した時、とうとう匂いだけの食事に満足できないブロウチェクは、顔をハンカチで隠しながら持っていたソーセージをかじり出した。すると皆は彼が絵を見て感動して泣いているのだと勘違い。しかしブロウチェクが「肉」を食べていると分かると、その醜い行為に皆卒倒してしまった。そこへ父親から逃れて来たエテレアがやって来て、再びブロウチェクにつきまとうので、ブロウチェクはペガサスに飛び乗るとさっさとその場から逃げ出した。月世界の音楽家たちが祝福の音楽で芸術家たちの意識を取り戻させ、皆は曲に合わせて行進する。やがて辺りに霧が立ち籠め、場面は元の地上の居酒屋に戻る。客たちが帰る中、古城の方から店のボーイがやって来て「ブロウチェクさんが木の箱に入れられて運ばれて来る!」と言った。マーリンカとマザルが愛の歌を歌う中幕となる。

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