第3幕
 夜明け前のサンタ・アンジェロ城の屋上。羊飼いの少年の歌が聞こえ、そこへ銃殺刑のため、カヴァラドッシが連行されて来る。彼は看守に指輪を与えて紙とペンを貰い、愛するトスカへの手紙を書こうとする。楽しかった思い出を回想しているうちに、ついに感極まって号泣する。全幕の中で最も有名なアリア、「星も光りぬ」がここでうたわれる。そこへトスカがやって来て、今までの経過の一部始終を報告して、出国許可証をみせながら、この手でスカルピアを殺したこと、銃殺は形式だけだと説明する。兵士たちがあらわれ、処刑の準備が完了する。4時の鐘が鳴って所定の位置に兵士たちがつき、轟然と銃が一斉に火を吹き、目隠しされたカヴァラドッシが倒れる。兵士たちは検視を終え、死体にマントをかぶせて整然と行進しながら去る。じっと見守っていたトスカは、遠くからまだ動いては駄目よと声をかけ、さあマリオ早く逃げましょうと、彼の体を揺さぶる。だが彼の体は、石のように動かない。慌ててマントを剥ぎ取ると、カヴァラドッシの胸は朱に染まっている。銃殺刑は、形式だけだったのではなかった。彼女は絶叫して、その場で死体に取りすがる。すると大勢の兵士たちが、城壁の階段をかけ昇ってくる。彼らはスカルピアが殺された、殺したのはトスカだ、捕まえろと口々に叫んでいる。彼女は追い詰められ、スポレッタに捕まりそうになるが、一瞬彼を突き離して城壁にかけ登り、おおスカルピアよあの世でと叫んで、空中に身を躍らせる。兵士たちは驚いて、城壁から下を見下ろすところで幕になる。
(C) 出谷 啓

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