第3幕
第1場 獄舎内の病院
火傷で入院したアリイエイヤは、付き添うゴリャンチコフに、聖書の「許せ、害を与えるな。愛せよ!」と言う一節が好きだと話す。そして世話をするチェクノフと言う男に、ゴリャンチコフから読み書きを教わったと自慢する。その横では臨終のルカが、身の上話をする囚人達に悪態を付き、老囚人はもう家族には会えないと祈っている。そこにシシュコフと言う男が割って入り、チュレヴィンと言う仲間相手に過去を語り始める。
ある日シシュコフは市場で、大農場主の老人と使用人フィルカ・モロゾフと言う男に会う。フィルカは賃金をひったくり、「農場を辞めて兵隊に行くが、娘アクリイナはもう生娘ではないぞ」と吐き捨てる。老人は激怒し、娘の恥を嘆いて家から叩き出そうと考える。その話を聞いたシシュコフの母親は、大農場の娘アクリイナも、今なら飲んだくれの息子(シシュコフ)の所に嫁に来るだろうと縁談を進める。さて結婚式当日、シシュコフは明け方まで飲み明かし、あばずれの嫁を打ちのめそうと鞭まで用意していたが、アクリイナは潔白であることが分かる。翌日シシュコフは彼女を辱めたフィルカの所に怒鳴り込むが、逆に「おまえは酔っていたので騙されたのだ」と罵られる。シシュコフは家に帰りアクリイナを散々に叩きのめす。一方フィルカは入隊の日を迎え見送りの人々に挨拶をしていると、物陰にアクリイナの姿を見つける。今までの仕打ちを詫びるフィルカを許したアクリイナは、夫シシュコフにフィルカへの愛を告白してしまう。嫉妬に狂ったシシュコフは翌日アクリイナを森に連れ出し殺してしまうのである。
シシュコフの長い話が終わり、アクリイナの悲劇に皆が言葉を失っていると、老囚人がルカの死に気づく。ルカの顔を改めて見たシシュコフは、ルカがフィルカであったことに気づき絶句する。老囚人が「あいつも母親から生まれたんだ」と言い十字を切る。その時、衛兵がゴリャンチコフの名を呼ぶ。アリイエイヤは動揺しゴリャンチコフにすがりつく。囚人達が見守る中ゴリャンチコフが衛兵に連れ出される。
第2場 獄舎の中庭
ゴリャンチコフが司令官のもとに連行されてくる。司令官は酔っていて、入所の際ゴリャンチコフに理由もなくムチ打ちの刑をしたことを謝る。釈放が決まったゴリャンチコフの足かせを囚人達が外す。アリイエイヤが姿をみせ、ゴリャンチコフに「あなたは僕のお父さんだ」としがみつく。ゴリャンチコフは「またいつか必ず会おう、可愛い良い子!」と別れを惜しみながらも、「新しい生活、黄金の自由」と歌う。その言葉に刺激を受けた囚人達は捕らえたままの鷲の籠を開け、鷲は飛び去って行く。ゴリャンチコフは「死者の復活!」と叫び、囚人達は「愛する自由!鷲は帝王!」と繰り返す。衛兵は、囚人達を労役に向かわせるために「行進!」と号令をかける。アリイエイヤは泣きながら追って来て「神の報いが与えられた!」と叫ぶ。衛兵の号令と囚人達の掛け声が響く中、幕が下りる。
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