第3幕
前の幕から約1ヵ月後の謝肉祭の朝、ヴィオレッタの寝室は薄暗く、いかにも貧しそうにみえる。彼女の結核は悪化して、持ち物も売り尽くして死を待つ身になっていた。起き上がろうとするが、よろよろとして起き上がれない。容色もすっかり衰えて、かつての面影もない。医者のグランヴィルが往診するが、彼はヴィオレッタを安心させるため、すぐに良くなるというが、彼女は信じてはいない。医者は帰りがけに、侍女のアンニーナに、もう長くはないと耳打ちをして辞去する。ヴィオレッタはアンニーナに、用事をいいつけて1人になる。
彼女は1通の手紙を取り出して、それを読み始める。ジェルモンからのもので、約束を守ってくれた礼と、アルフレードに真実を話したことが記されているが、彼女は読み終わってもう遅いわとつぶやく。そして鏡の中の自分をみながら、有名なアリア「さようなら、過ぎ去った日よ」をうたう。窓の外からは、謝肉祭の賑やかな合唱が聞こえて来る。するとアンニーナが駆け込んで来て、アルフレードが帰って来たことを告げ、続いてアルフレードが飛び込んで来て、2人はしっかりと抱き合う。彼は自分の非礼と身勝手な態度を詫び、彼女も生きて彼に会えたことを喜ぶ。そしてこれも有名な二重唱、「パリを離れて」がうたわれる。2人は喜びのお礼に、教会へ行こうと、ヴィオレッタは着替えをしようとするが、力が尽きてその場に倒れ込む。アンニーナが急いで、医者を呼びに走る。
そのときジェルモンと医者が、慌しく入って来る。ジェルモンは自分の行ないが、こうした悲劇を招いたのだと、深く後悔してヴィオレッタを初めて娘と呼び許しを乞う。ヴィオレッタは手箱の中から、自分の肖像の入ったメダルを取り出し、それを片身としてアルフレードに手渡し、いつの日か結婚するとき、その清らかな娘にこれをあげてと懇願する。そのとき不思議なことに、彼女の顔に明るさが甦り、気分が良くなって、苦しみの痙攣もなく、もう一度生きられるかも知れないというが、これが薄幸のヴィオレッタの最後の言葉で、アルフレードは彼女の名を呼んで泣き崩れ、ジェルモン、アンニーナ、医者の3人は泣きながら神に祈る。幕。
(C) 出谷 啓
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