トリスタンとイゾルデ
Tristan und Isolde
リヒャルト・ワーグナー
Richard Wagner
独/1813-1883
初演:1865年6月10日ミュンヘン宮廷劇場
台本:独語/作曲者
演奏時間:第1幕80分/第2幕70分/第3幕70分/合計3時間40分
楽器編成:
3Fl(Picc),2Ob,EH,2Cl,B-Cl,3Fg/4Hr,3Tp,3Tb,Tuba/Tim,Trg,Cym/Hrf/Str
舞台上に3Tp,3Tb,6Hr,E.H
概説:
ドレスデンの市民革命に加担したため、スイスに亡命していたワーグナーは、畢生の大作《ニーベルングの指環》四部作の作曲に取り組むが、途中で作曲を中断し、その間に別の二つの楽劇を完成させる。そのひとつが、中世の説話に基づいた恋愛劇《トリスタンとイゾルデ》だった。「トリスタンとイゾルデ」の物語はフランスのブルターニュ地方の起源で、中世にはヨーロッパに広く流布していたが、ドイツではゴットフリート・フォン・シュトラースブルクによる未完の叙事詩が代表的なものである。ワーグナーは、この物語のストーリーを極力単純化し、そこに「夜の讃歌」や「愛の死」の肯定などロマン主義的な価値観を織り込んで台本を仕上げた。毒薬を愛の薬にすり替えるブランゲーネ、マルケ王に密告するメーロト、傷ついたトリスタンを故郷へ運ぶクルヴェナルなど、外的な出来事に関わる人物は副次的にしか扱われず、トリスタンとイゾルデの内面世界が全曲のほとんどを占めている。ほかの登場人物では、かろうじてマルケ王の孤独と哀しみが尊い諦念の感情を強調して描かれているにすぎない。
作曲技法としても、定まらない調性、半音階進行の多用など、後世の作曲家たちに与えた影響の大きさは測り知れない。演奏の難しさのため上演までの道のりは遠かったが、バイエルン国王ルートヴィヒ2世と出会ったおかげで、1865年にミュンヘンの宮廷劇場でハンス・フォン・ビューローの指揮により初演された。
(C)吉田 真
最終更新20101225
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