第4幕 処刑
城壁の下、遠くに塔が見える。戦いに敗れて塔に幽閉されているマンリコを慕って、レオノーラが忍んでやって来る。アリア「恋はバラ色の翼に乗って」。教会からは「ミゼレーレ」の合唱が、また塔の中からはマンリコの別れの歌が聞こえて来る。すると伯爵が家来と城門から出て来るので、レオノーラは急いで物蔭に身を隠す。1人になると伯爵は、レオノーラはどこへ行ってしまったのかと嘆く。そのとき彼女は彼の前にあらわれ、マンリコの命乞いをする。二重唱「この苦い涙を見てください」結局レオノーラが自分の身を捧げるからと申し出て、ようやくマンリコの命を助けると伯爵は約束する。しかしそのときレオノーラは、指輪に隠し持っていた毒薬を仰いで、伯爵に身体を与えてもそれは死体だとつぶやく。これでマンリコの命は助かったと喜び、伯爵も愛するレオノーラは我が物と狂喜する。二重唱「彼が生きながらえば私は幸せ」。
城内の牢獄。マンリコとアズチェーナが、処刑されるために牢につながれている。アズチェーナは火焙りにされるのを恐れて、息子に朦朧として話しかける。二重唱「我らの山に」をうたい、自分たちの山で平和に暮らしたいと願う。マンリコは母親をそっと、寝かしつける。そのときレオノーラが駆け込んで来て、命は救われたから逃げてというので、てっきり自分を救うために、伯爵に身体を与えるつもりと誤解して彼女をなじる。だが段々と体に毒が回り、立っていることも出来なくなると、その身の潔白を信じるようになり、疑った自分を恥じる。そこへあらわれた伯爵は、彼女が自分を裏切ったことに怒り、マンリコを処刑するように命令する。アズチェーナが目を覚まして、伯爵を止めようとするが、時既に遅く牢獄の窓から、マンリコの処刑がみえる。するとアズチェーナは狂ったように、「あれはお前の弟だ、お母さん復讐は果しましたよ」と叫んで息絶える。伯爵は死体に囲まれて、呆然と佇む。そして幕が下りる。
(C)出谷 啓
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