第1幕
ところはイタリア、とある地方の小都市の劇場。明日の初日を控えて、出演者、スタッフたちが、新作オペラのけいこ中である。出し物は、古代ローマ建国の史実に基づく作品で、題は「ロモロとエルシリア」。
幕あきは、けいこの途中の場面。プリマドンナのコリルラは、かなり調子が出る。が、よくあるハプニング。すなわち、楽譜の欠落部分が指摘され、ひと騒ぎ。台本作者とマエストロが、互いに、自分のせいではないというので、歌い手たちは、気が気でない。しかしだれよりも気をもむ人物。それが実はこの公演の興行主なのだ。
2人の客演者は、頼りない主席テノールのグリエルモと、正体不明のメゾソプラノ歌手ドロテア。一体どういう配役なのだ? そこにコリルラの夫プロコーロの女房自慢も絡んで、騒々しい。が、みなそれぞれ生活がかかっているために、その騒ぎは、肝心のオペラそこのけのアンサンブルとなる。いわば熱気のなせるわざか。
突如、舞台裏から物音。一同驚くところへ、端役ソプラノのルイジアの母親、アガタが登場。たいした威勢の良さだ。が、何と、なじみの酒場での前祝いの一杯機嫌と分かる。だが、アガタとしては、娘がチョイ役では不満足、ぜひコリルラと二重唱を、と望む。
アガタは、プロコーロを、成り上がりとののしる。生活のための菓子売りだ、と、プロコーロは心を打ち明ける。果たせぬ夢を妻に託す夫にとって、妻がプリマドンナの地位を得たのは唯一最大の誇りなのだ。
身につまされる興行主。一方コリルラは新人ルイジアとの二重唱など、まっぴらだと、はねつけ、マンマ・アガタと、けんかになる。「目障りばあさん」「ばち当たり娘」と。アガタは、年をとっても、かつての歌い手。負けてはいない。
揚げ句、片や愛想つかし、片やアガタに歌いのめされ2人の客演者は降りてしまう。背に腹は代えられぬ。プロコーロとアガタが代役と決まる。
そこに届いた一通の手紙。スポンサーであるアガタの伯父からルイジアあてのもので、内容は、興行主のずさんな経営ぶりを察しての警告である。知って騒ぐ歌い手たちをよそに、作者側2人は、芸術至上とやらの、知らぬが仏。
おやまた一件、難題だ。平素ぐうたらの役人が駆け込み、この中にスパイがいるぞ、と、がぜん、居丈高になる。いやはや大混乱、どうなることか?

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