第2幕
何も知らないマリアが「素敵な気分」を歌っていると、チノが恐ろしいニュースを伝えにやって来る。チノは、復讐するため拳銃を持って出て行く。マリアは、兄のベルナルドがトニーに殺されたなどとは信じられないが、返り血を浴びたトニーが非常階段から入って来たので、彼女はすべてを悟って青くなる。そして「街路も壁も消えてしまうほど遠いところへ君と行こう」とトニーが歌うと、場面は幻想の「空間と空気と太陽の世界」となり、敵味方が一緒になって軽快なダンスを踊る。遠くの方からは「どこかで我々を待つ場所がある」と、歌声が聞こえて来る。だがこれはあくまでも幻想で、2人は現実のアパートの部屋で「サムウェア」を歌う。
午後10時、ウェストサイドの裏路地。ジェット団のチンピラが警官のクラプキーの訊問を受けるが、体良くはぐらかしてしまう。彼らは大人の無関心を揶揄して、また半ば自嘲気味に、「クラプキー巡査殿」を歌う。
午後11時半、アパートのマリアの部屋。アニータが帰宅した気配に、トニーは窓から逃走する。それを知ったアニータは、あんな男と付き合うのは止めた方がいいとマリアに忠告する。だがマリアは彼への深い愛情を告白し、アニータも仕舞いには彼女への理解を示す。そこへ警官のシュランクが、事情聴取に現れるが、不得要領のまま引き上げる。
午後11時40分、ドラッグストア。トニーは地下室でマリアを待っている。チノがマリアに頭痛薬を買うという口実でトニーの命を狙いに来ることをトニーに伝えるため、アニータがやって来る。だがそこにたむろしていたジェット団の面々から、散々いたずらをされて怒ったアニータは、チノがマリアを撃ち殺してしまったと、嘘の報告をして行ってしまう。
午後11時50分、ドラッグストアの地下室。潜んでいたトニーは、どこか知らない土地でのマリアとの新しい生活を夢見ているが、ドックがアニータから今しがた聞いた「悲報」を伝える。
深夜12時、頭の中が真っ白になったトニーは、町にふらふらとさまよい出て、「チノ、出て来て俺も殺せ」と大声で叫ぶ。するとそこへ、思いがけず、マリアが姿をみせるので、驚いた彼は彼女の方へ思わず走り寄ろうとする。そこへ銃声一発、チノの撃った銃弾にトニーは倒れる。マリアに抱きかかえられ、トニーは彼女の腕の中で絶命する。泣き崩れるマリアは、今初めて本当の憎しみを味わった。それは、無意味な対立を続けるジェット団とシャーク団全員に対する憎しみだった。彼女の悲痛な言葉の前に、彼らも失ったものの大きさを実感する。そして和解を誓い合ったジェット団とシャーク団の全員が、トニーの遺体を担ぎ上げて舞台を去り、幕となる。
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