観光地についての必須の条件は、世界でただ一つのものがそこにある、ということである。
どこにもある、ここにもあるというものであってはいけない。そこにしかないものがあり、できれば、何回みてもよい、といったものでありたい。
そして、観光案内に、「世界にただ一つ、一見に値する」と書いてあるだけでもう充分である。
ル−ブルで、モナリザにさっとうする心理は、そんなことではないだろうか。
さて、青森県内にそれにあたるものがあるだろうか。弘前公園の桜が日本一といわれるようになったのなら、候補の一つではあろうが、桜はどこにでもあり、名所は多い。恐山も、そこにおとずれる人たちに、ある種の感慨をおこさせるところではあるが。
私は、まだあまり知られていない青池、自然美としての十二湖の青池をあげたい。その青さがすばらしいのだ。
水の色の美しさというなら、カリブ島のGrotta Azzurraが有名だ。そしてアズ−ルという色の感覚もすばらしいものといえる。だが、観光船にのるのに、300リラ、その中に入る小舟にのりかえるのにまた370リラを要求されたことも忘れられない。その青の洞窟の青を、暗調応のできぬ間に、充分たのしむ間もなく出されてしまったことも忘れられない。
そこへゆくと、青池は違う。あの青さは、日本的な青さである。そしていつまでも気のおもむくままに、静かな山の中で、その池の青さをたのしむことができるのである。