”人をモルモットあつかいにして”とは、最近よく聞かれる言葉である。医学に対する不信のあらわれであり、ジャ−ナリズムはそれをあおるかのように書きたてる。
一体、患者と医師との信頼関係はどこにいってしまうのであろうか。
こんなとき、数年前留学していたミネソタ大学のキ−ス博士が心臓病者にあてた手紙A LETTER TO "GUINEA PIGS"を思い出すのである。
”親愛なるモルモット諸君”という書き出しではじまった手紙には、研究の目標を書き、毎年きまった検査を受けるだけで、何ら医学的処置はしないこと、検査の結果は個人医に連絡し、その個人医の忠告が最良のこと、そして、一般的な心臓病を予防するにはどうしたらよいかが書かれていた。
自分がすすんで検査に加わったという”VOLUNTEER”としての前提があるのだが、自分のことを”モルモット”とよばれても、それを受け入れるだけのものがあることは、うらやましいことである。
近頃の医学部内の紛争は、学生医局対教授の不信にねざしているようだが、この医師同士のいざこざを国民はどう考えているのであろうか。国民対医師の不信があっては、正しい医療が行われるはずはない。