へき地校と学校保健

 

 先日青森県の第17回学校保健大会が、三戸町・田子町・南部町を会場に開かれたとき、”くま”と”WHOの健康観”が話題になりました。

 ”くま”というのは、当地方にくまがでて、農家の人がやられたという、開催地のへき地としての特色を示し、また一方WHOの健康観は、それを学校・学級・校外生活に生かすためには、どうすればよいかを、研究・協議することが大会の基本方針であったからなのです。

 へき地校の分科会では、当然なことながら、医者は年1回来て胸をたたくだけである、専門医はいない、だからトラコ−マは1名もいないことになっている、といった社会資源の不足と、それからくる問題が話題になりました。しかし一方、教師自身は何をやっているのか、身長や体重を正しく測定できるのかという反省が出、また身長計もないという反論、さらに何年もいて身長計一つもうけられないはずはない、今まで何をしていたか、 医者が足りないといっても、児童の健康観察はできるのではないか、といったへき地校に勤務する先生方の実に積極的な意見が聞かれました。

 事実、岩手県に接する当地方には、”昭和”28年になってはじめて学校教育が受けられるようになった「水亦」という部落のあるところなのですが、ここ数年の各方面の努力にとって、分校もでき、電気も通じ、ランプ生活からテレビ教育の受けられる生活に急テンポに変化しています。10年前にはみるかげもなかったへき地校が、今や健康優良校をめざして、地域ぐるみ涙ぐましい努力がはらわれているのです。そしてすばらしいみのりを見ることは教育者としての喜びでもあるでしょう。

 しかしそう思う反面、へき地校をいつまでもへき地校としておいて、教育者の努力にのみ、期待をかけてよいものかどうか考えさせられるものがありました。

(学校保健研究,5(12),1,昭38.)

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