学校保健では”身についた知識”ということがいわれる。そして健康生活についての知識は、知識として頭の中にあるだけでなく、実践として行動にあらわれなければならない。
このことで大変頭のいたいのは、喫煙の問題である。喫煙の害は日毎に強調され、知識としてわれわれに知らされるのに、現実は”喫煙は現代高校生に常識?!”なのである。
たばこが全世界に広くゆきわたっていった時代には、たばこは”万能薬”とよばれたこともあった。しかし、最近の疫学的研究、特に追跡的疫学研究の成果は、われわれに喫煙の害を明らかに示しているものといえよう。
イギリス医師会の1961年の報告、アメリカ政府公衆衛生局の1964年の発表、、そして1970年WHOは”喫煙防止の方策”について勧告を行った。
アメリカの10人委員会の一人だった疫学者のシュ−マン博士は、委員会発表の当日、1964年1月11日以後、たばこはやめたと疫学の講義の中で述べていた。
1965年11月29日、シカゴの衛生部を訪問したのがきっかけで、私も禁煙にふみきることができた。なにしろスタムラ−部長以下、役所中禁煙だったことに考えさせられた。最近出席したWHOの会議も、禁煙を宣言して始まった。
こんな話を健康優良学校の先生方にしたら、それ以後そこの校長さんはたばこをやめられたという。
最近医学生に、”医師は患者にたばこについて、どのようなアプロ−チをすべきか”と問いかけたとこ、ほとんどの学生から”医師は患者の前でたばこは吸ってはならない”(自分はなかなかやめられないが)という回答がかえってきた。
医師といい、教師といい、自分の利益より社会的責任をまず考えなければならぬプロフェッションを前提としなければならず、当人の知識と行動の一致が、教育の第一歩ではないか。