クイズ番組花ざかりの今日この頃、まだかなりの高視聴率であるという「クイズ面白ゼミナ−ル」に、”りんごと健康”についてのレクチャ−に出演したことの裏話を、いささか古い話ではあるが、記録として書き残すことにする。
昭和58年1月23日の日曜の夜放映された”りんご”がテ−マの番組は、医師会忘年会の席上、司会の前田慶子先生がPRして下さったこともあって、沢山の方に見て戴いたようだ。番組の放映中から電話があったり、思いもかけず昔教わった小学校の先生からお便りを戴いたりして、今も人にあうと話題になる出来事ではあった。
いわく”昔と一寸もかわりなく若いですね、お化粧をしたのですか、随分薄くなりましたね、昔の講義を思い出しました。出演料はいくらでしたか、あれはナマですか”などなど。
あれは”ナマ”ではなく、録画である。それも1か月も前の。
3か月前に電話があり、弘前にスタッフが取材にきたのが11月29日、そして録画とりは12月9日であった。
毎週放映される番組は1か月も前にすでに出来上がっているのである。
私への注文は、りんごと健康についてきっかり”2分半”内容はおまかせということだった。30年かかった仕事を2分半である。
クイズの問題一つ一つを作るのに全国を飛び歩いて取材をし、NHKらしく一つの間違いも許さないように準備をすることは大変な事のようである。録画とりの途中でパネルに書いた数字の一つが間違ったといって、看板書きの係りに連絡し、その人がきて訂正がすむまで30分も何もすることがなく待たされた。
クイズ番組にリハ−サルがあった。
芝居をする人々は午前にも一回、私は2時にスタジオ入りして一回、本番は6時から8時までで、その間はかんずめであった。クイズ番組にリハ−サルとはおかしいが、NHKらしくやっていた。タレントさんたちは本番だけだが、アルバイト学生を相手に全く同じ問題で鈴木アナがやっていた。私のレクチャ−も。
シナリオができていて、カメラワ−クもいつも同じだ。ガリ刷りのシナリオをみて息子が後ろからとらせるなといっていたが、ばっちりと頭の薄いところは撮られてしまった。
タレントさんたちは6時前に所内の喫茶室にたむろしていた。時間に絶対遅れないことが第一歩であろう。見慣れた人たちがいた。あべ静江、柳生博、叶和貴子、阿佐田哲也、大山のぶ代、春日宏美、利重剛、白川由美、加納竜、新藤恵美、花沢徳衛、松岡きっこがその日の生徒達であった。
スタジオ101は大きかったが、セットは思ったよりは小さく、すぐ目の前の人たちに話かけるようであった。モニタ−テレビが別の所に置いてあって、見学者にみせていて、あのア−とかワ−とかいう声はその人たちのものである。
いざ本番に私が喋る数分前、ソ−ト近かづいてきた人がいた。私の背広にワイヤ−レスマイクをつけるために、ただそれだけのために月給をもらっているのか。一番大事なことには違いないのだが。
カ−テンが珍しく開かないという事故があって取り直しをしたが、無事録画が終了し、タレントさんたちはお土産をもらって帰っていった。記念品だけでなら出ないよといったら、それなりに手当をするといっていたが、交通費とホテルの実費プラスアルファ−と5万円が謝金であった。
鈴木健二アナウンサ−:ではここで専門の先生からりんごと健康についてのお話をうかがうことにします。講師は弘前大学医学部の佐々木直亮先生です。
佐々木直亮:昔からりんごがありましたヨ−ロッパでは、りんごを毎日1個づつ食べると医者を遠ざける、という諺があります。
りんごと健康について一体科学的にどんな証拠があるのか、ということなんですけど。
一番古くは、りんごをすりまして赤ちゃんにたべさせると下痢が治る、という研究がありました。これはドイツの小児科の先生が報告されたことで、世界中に有名になり、日本にもりんごと共に一緒に入ってきました。
りんごを食べるとはだが白くきれいになるという話がありますが、りんごを食べるとお通じがよくなることと関係があるかもしれません。
りんごの中にはペクチンという物がありますが、ペクチンは毒消しになるということで沢山研究があります。
私達は、東北地方に若いときから多い脳卒中そして高血圧、それを予防するにはどうしたらよいかの謎ときの研究をやって30年近くたってしまいましたが、りんごを食べることは高血圧の予防になるのではないかと考えるようになりました。
高血圧に一番悪いのは食塩のとりすぎだと思いますが、悪い食べ物があればもう一方に高血圧によい食べ物があってもよいのではないかということで、りんごのような果物が高血圧にならないように働いているのでないか、と考えるようになりました。
実際にりんごを食べて血圧が下がったという研究をやったことがありましたが、また10年20年と毎日りんごをすこしずつでも食べ続けている方の血圧が、食べない方の血圧に比べてよい経過をとっているということを認め、学会に発表しました。
もちろんりんごだけた食べよいというのではなく、食べ過ぎてもいけませんが、毎日の食卓にりんごのような果物がいつも入っているような食生活を小さい時から続けるということが健康にとていことだと思います。