癌が死因の第1位になり、心臓病が脳卒中を追い抜いて第2位になったという。
これがどのような意味をもっているのであろう。
人が生まれていずれは死ぬのだから、幾つの時に何で死ぬかが問題だ。また人は一つの死因で死ぬように統計される決まりになっているので、数とか順位のもつ意味をよく考えてみる必要がある。
人生80年時代といわれるのは、零歳の平均余(寿)命の数値が世界一長く計算されるようになったからだが、その数字がどのように計算されるかも知らないで、「文学的」に自分勝手に利用している人が大部分だ。
よくいわれるように統計は一つは真実を伝えると思うが、また簡単に嘘もつく。統計的に計算される数値の解釈は慎重でなければならない。
死の絶対数、死因の順位、そして計算される死亡率、その多くは単に人口当たりの粗の死亡率が用いられることが多いが、そのどれもが、どれだけわれわれの健康問題についての情報を与えてくれるのか疑問である。
死はひとりの人にとって極めて厳粛な事実ではあるが、死亡率などと計算されると、問題は個人からはなれて、見方は「疫学的」になる。
脳卒中について、かつて近藤正二先生は20歳から59歳の壮年期の死亡率を問題にし、われわれは30歳から59歳までの中年期の死亡率を問題にした。これは量より質の問題把握であった。
そして今は生まれた年代別に(コホ−ト的)に健康問題を考えなければならないと思う。それぞれ問題が違うのだ。
心臓病、癌、いずれも同じである。
そして死亡についての情報からだけでなく、その前の病的状態について、またその前の健康からずれた状態、その状態を作りあげるもろもろの環境、また自分でもその状態を作り上げている生活に目をむけ、健康問題を把握しなければならないと思う。