ミニスピ−チ・りんごと健康

 

 先日NHKのクイズ面白ゼミナ−ルでは2分30秒のレクチャ−をやりましたが、今日は5分間のミニスピ−チをやらせて戴きます。

 私は弘前に参りましてから30年になりますが、弘前大学の医学部におきまして、りんごと健康とのつながりに興味をもって研究して参りました。

 それは何故かというと、りんごが何千年も昔からありましたヨ−ロッパには、りんごを1日1個食べると医者を遠ざける、健康を保てるという諺があるからでありまして、医学部のなかでも、健康の原理を追求する学問としての衛生学を担当している者にとっては、またとないテ−マでもあったのでした。

 実際調べてみますと、色々なことがわかりました。

 なぜヨ−ロッパでリンゴが健康のもとであったかということですが、これは昔、北のヨ−ロッパには野菜や果物がなく、壊血病といわれる病気が風土病としてあったのでありまして、壊血病という、今ではビタミンCの欠乏でおこることがわかっておりますが、この壊血病がりんごを食べることによって自然に治っていたからではないかと思われます。

 このことはりんごがビタミンC欠乏に有効であるという、弘前の東北女子大学の学長をしておられる葛西文造先生の実験研究で明らかにされたと思います。

 また古くからりんごの中にありますペクチンという物が、からだのなかの毒をけすといわれておりました。

 このペクチンは、最近話題になって参りましたりんごの繊維と関係があります。

 この繊維、ファイバ−といわれていますが、これは今までの栄養学の方では、殆ど役にたたないと考えられておりました。しかしこの繊維、ファイバ−が今あらためて見直されて参りまして、研究がすすんでおります。

 私はこの地方に多い脳卒中や高血圧の謎解きをして30年研究して参りましたが、いちばん悪いと考えられるのは食塩のとりすぎであります。これはナトリウムが多いことが悪いということですが、このナトリウムが多いことの害を、りんごの中のカリウムが保護をしているのではないかと考えました。この点を学会に指摘しましたが、このような考え方が次第に国際的にも認められるようになりました。

 このように考えて参りますと、りんごを毎日食べることは、いろいろな意味からいって健康の保持に役立っていると考えられます。

 この青森にりんごが入って100年、この青森の方々の健康は随分良くなったと思います。

 来年のNHKの朝のテレビドラマのテ−マは「いのち」ということで、今から40年前のこと、この津軽の地方を舞台に働いた女医さんの物語と聞いておりますが、昔短命であると言われていたこの地方の方々の健康も、昔と違って随分と健康になったと思います。これは、皆さんがりんごをつくることによって経済的にも安定し、また知らず知らずりんごを食べていたことに関係があるものだと考えております。

 さてこの5月の16日に厚生省は日本人の健康づくりのための食生活指針を発表しました。

 要はバランスの良い食生活ということですが、その中で食塩はなるべく控えめにし、野菜果物をとることが述べられていますが、今までお話ししたことが認められてきたことと思います。

 そのことは世界をあげていわれてきたことでありまして、それを実行することによって皆さんはますます健康になるものだと思います。

 日本全国の人々に、1日1個のりんごを食べて戴いたらどうでしょうか、必ず皆さんが健康になるものだと思います。

 これでミニスピ−チを終わります。

(85’りんご花まつり,昭和60.5.19.)

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