「オイゲン・ヨ―フムの遺産」とは、指揮者オイゲン・ヨ―フムの死去に際してNHKがTVで放映した番組の題名だが、日本での公演の録画放送があった。
その中に彼の得意とする曲「ブルックナ―の交響曲第七番ホ短調」があったことを覚えておられる方もあるだろう。
しかしその曲が終ってすぐ聴衆のブラボ―の声があがったとき、彼が団員に向かって大きな舌をペロッとだしたことに気が付かれた方があったであろうか。
聴衆には見えないもののTVにはばっちり大写になっていた。
何故彼は舌をだしたのであろうか。
丁度指揮で飯を食おうとしている二男の修が家にきていて一緒に見ている時であったので、その理由を解説してくれた。
ヨ―ロッパではあの曲が終った時はしばし聴衆は靜かで、次第に拍手がわくそうである。それが終った途端に大きな拍手が指揮者の背後で起こったその意外性に思わず舌がでたのではないかと。
同じようなことがフィッシャ―ディスカウの冬の旅全曲公演の時にもあった。
昔ドイツ語の曲を覚えたこともあっておおいに期待して聞いたのだったが、Der Leiermann が靜かに終った途端におおきな拍手が起こったのには、高い金を払って聞きにいかなくってよかったというのが息子の感想であった。
音楽の曲想はそれなりのものがあるものだと思う。
昔新響や日響を日比谷公会堂へ聞きにいっていた頃、指揮が終っても皆靜かで、日本人は音楽を知らず、拍手の仕方も知らないと言われていたと思うのだが、本当に西洋音楽を理解するのには時間がかかるもののようである。