卒業後四十年もすぎるとクラス会を毎年でもやろうではないかとなり、同級生がいる台北とかアメリカでもやることにもなった。また二十年、三十年、四十年と家族入りのアルバムをつくったりした。
この随筆欄にもその出来事を書かれる方も多いようだが、山紫会という千葉大を昭和三十四年卒の同級会の皆さんが「何か社会に貢献できる記念事業を」ということで全員が協力して翻訳して出版した本「医学思想の源流」レスタ−キング著、西村書店にぶつかってその内容もよかったが、その心意気に感激したことを紹介したいと思ったのである。
女子大で健康科学を、保健婦や看護婦に医学概論などの教育をしている者にとっては、衛生学会の図書展示にあったその本の標題は魅力的であった。
その内容は名著との評判の高い医学思想史にふさわしく、いくつかの大事な考えが述べられていた。
「私自身は、医学の業績よりも、医学に影響を及ぼした概念とアイディアの方に興味がある」にはじまり、「素人なら経験からどうしたら良いかを知ればよいが、医師はそれに加えて何故そうするのか、その理由を知らなくてはならない。非常に詳しく、明瞭かつ合理的に、体系的、理論的に知らなければならない。医師と素人との違いは、この知識にある。・・・我々がつけている説明には深い根がある。我々の説明は、我々の生活の仕方全体、知的背景、文化的遺産、また価値の感覚から出てくるので、それは全体としての文化的状況を反映する鏡でもある」とプロロ−グにあれば、この先の本文を読まずにはおられない。
「全員参加という一同級会の理想の他に、本書のような名著の翻訳には、社会的に重大な責任を伴う」ために幹事団をつくり、云々とその苦心があとがきにのべられといた。「二十五周年記念の予定が三十周年記念になってしまったとはいえ、この事業は、・・生涯誇らしい思い出として残るであろう」と。
この様な機会を与えてくれた諸君に感謝したいと思う。