食塩と健康

 

はしがき

 

 昭和55年に「食塩と栄養」(第一出版)を出したが、その本の中で「食塩摂取と健康」を書いた。食塩と健康とのかかわりを、歴史的・生理的・疫学的に、とくに高血圧とのかかわりを主に解説したものであった。また共著者の菊地亮也氏の東北を中心にした調査・実践を基に、低塩指導など栄養活動の実際を述べたもので、「慢性食塩中毒」ともいえる日本人の食生活に警鐘を与え、その後の日本における食生活改善にいささかの貢献をしたのではないかと考えている。

 丁度厚生省が日本人の栄養所要量として食塩の適正摂取量として10グラム以下を目標とすべき上限値として示めした時でもあった。

  

 それから10年、日本だけでなく国際的にみても、食生活の中の食塩摂取については、いわゆる成人病予防として、循環器疾患の予防のみならず、胃ガンの予防にまで、低塩化が広く指導されるようになった。

 

 人々は数千年来食塩を食生活に取り入れてきたが、またこの地球上には食塩のない食生活("no salt" culture)をしている人々がいることも最近明らかにされた。

 

 本書では歴史的にみて人間と食塩とのかかわりはどのようであったのか、とくに健康とのかかわりについてどのように考えられてきたか、どのような研究が行われてきたかを、最近の研究を含めて解説をしようと試みた。

 

 高血圧の疫学的研究のなかで明らかにされたりんご摂取と健康とのかかわりを「りんごと健康」(第一出版)にまとめたが、その本の姉妹編としてここに「食塩と健康」を書いた。

                    平成3年9月

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