辻達彦先生から「余生語録」を贈って戴いた返事に「語録69号拝受 今年の立春は暖かく・・・」と書いた。昨年「今日は立春。だが弘前の外は大雪である」と書いたことを思い出しながらである。
”親衛会”のよしみか、”筆マメ”の先生の、”ワ−プロ・お手製の余生語録”を毎回贈って戴いているのだが、もう69号になった。”バックナンバ−”は 関係の知人に回しているので今は手元にはないが。
・・・今朝2月12日7時NHKラジオのトップニュ−スは”この弘前の一の渡での事件”であった。
「頭痛・吐き気で、男女2名は意識不明、子ども達は意識はある・・・練炭のもえかすがあり、一酸化炭素中毒が疑われている」と。・・・「ああ!」
北海道での”ガス管破損”での中毒死、”パロマ・リンナイ”につづいて神戸での”ガススト−ブ中毒死”。そしてこの弘前での事件である。・・・「ああ!」
何故「ああ!」と書いたかというと、”一酸化炭素中毒”の”原理”そして”予防”の方法は、大分前から分かっていると考えるからである。
それなにのに何故? この”知識”が一般化し、”常識”にならないかと思うからである。
”一酸化炭素中毒の原理” とは”Hb(ヘモグロビン)”と”O2(酸素)”と”CO(一酸化炭素)”の”三角関係”である。
私が医学博士号を戴いた時の論文名は「血球素に対する酸素と一酸化炭素の親和力についての研究」(労働科学,28,46--53,98-104,1952)で、”Hbへの親和力”が”COは酸素に比べて200-300倍強い”といわれていた従来の研究を追試し、”自分のHb”では”210倍”であったこと、”種族”によって違うこと、またそれに影響する”諸因子”を少し追究したことが思い出される。
弘前へきてからは、”高血圧”に”CO”が関係があるかなと一寸考えたこともあったが、他の生活環境へ目を向けた。
”原理”が判明し、”中毒”の予防の方法も分かっていることには、さらに”研究への意欲”が無くなった自分を思い出すだけである。”Hbのガス抱容能”の”生理学的・生化学的原理”はまだ分からないが、”衛生学あるいは疫学的”興味がないという意味である。
でも”予防”に関係のある論文として、われわれの生活環境中にCOの存在が分かれば予防が可能と考え、歴史的に洗いざらいして、医学書院発刊の綜合医学に「生活環境中の一酸化炭素存在の認識」(14,946-948,1957)を書いたときに丸山博先生から”ほめられた ”記憶がある。
また北川先生が「CO検知管」を発表されたとき、それをすぐ応用して「血中COHB飽和度測定法」を発表し、”Chemical Abstract”にも掲載され、それが外国雑誌に引用されたこともあった。法医の赤石英教授が興味をもたれて法医学会へ紹介されたことがあったが、今はどうしているかしら。どれもこれも数十年前の話である。
そんなわけで、「ああ!」と書いたのである。
数年前、自動車の中で「練炭を用いての自殺・心中」が流行したことがあった。そのとき私のHPを読んだらしく、新聞記者が電話をかけてきたことがあったっけ。
今は電話には出ず、メ−ルかFAXでと返事させているのであるが。(20070212)