時と場所:シチリア島のメッシーナ
第1幕 総督の庭園
メッシーナの民衆は、シチリア軍がムーア人との戦いに勝利をおさめた事を祝って讃歌を歌い、シシリエンヌを踊りながら、司令官ドン・ペドロ率いるシチリア軍の凱旋を今かいまかと待っている。そこにレオナート総督が娘エロと姪のベアトリスを伴って登場する。エロは、副司令官として戦地に赴いている恋人クラウディオの帰還に胸躍らせ「もうすぐ会える、クラウディオの勇敢な偉業を称え、私はあなたと結ばれるでしょう」と愛を歌う。一方ベアトリスは昔から喧嘩相手のベネディクト将校の帰還を素直には喜ばず、皮肉交じりに「まだ生きていたの?」と歌う。
いよいよシチリア軍が凱旋すると、ベアトリスとベネディクトは早速冷やかし合い、言い争は次第に過熱していく。一方エロとクラウディオは再会を喜び合う。ドン・ペドロ司令官がクラウディオの将来を祝福し、結婚式は今宵執り行われることになる。そして幸せなカップルの姿を見れば、ベネディクトも心を動かしベアトリスへの愛に目覚めるのではと期待する。しかしそんな周りの思惑などお構いなしに、ベネディクトは「結婚するくらいなら、修道院のほうがまし」と歌い、ドン・ペドロとクラウディオとの三重唱で「万が一結婚するようなことがあったら『ここに結婚した男ベネディクトあり』という看板を出す」と宣言し去っていく。そこでドン・ペドロとクラウディオは、ベネディクトとベアトリスがお互いに想い合っている事を気づかせようと一計を案じる。
婚礼の準備が進み、宮廷の音楽隊が到着する。楽長のソマローネが、結婚する二人の為に書いた婚礼の曲をリハーサルし、お祝い気分は盛り上がっていく。そこにベネディクトがやって来ると、ドン・ペドロ司令官とレオナート総督そして友人のクラウディオが何か真剣に話し合っている。ベネディクトは立ち聞きしようと茂みの後ろに姿を隠す。すると三人は「ベアトリスはベネディクトに恋をしているが、どうせベネディクトは嘲笑うだけだろうから、この事は彼には内緒にしておこう」と話し合い行ってしまう。しかしこれはドン・ペドロらの策略で、ベネディクトとベアトリスの気を引こうと仕組まれたものだった。そうとは知らないベネディクトは衝撃を受け、隠れていた場所から姿を現す。「これはトリックなどではないぞ!彼らの話は真剣だった。ベアトリスが私を愛しているなんて!」と感動し、ベアトリスの素晴らしさと魅力を褒め称えて情熱的に歌う。
その頃エロと、侍女のウルスラもベアトリスに「ベネディクトはベアトリスに夢中なのよ」と嘘の話を聞かせて、婚礼の宴を抜け出して来たところだった。美しい庭園には花の香漂う夜風がやさしくそよぎ、ナイチンゲールや虫の声が聞こえている。降り注ぐ月の光の中で、はしゃぐ乙女エロとウルスラは、甘い感傷に酔いながら、夜奏曲「静けき清らかに澄んだ夜よ」を歌う。
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