第3幕
 ダンフェールの門。第2幕から3ヶ月ほど経った、2月末の夜明け前のひと時、雪がちらついている。鉄の門扉が開くと、道路の掃除夫や野菜売りの女たちがとおり、やがて黒いマントを着たミミがあらわれる。彼女は結核に侵され、時々激しく咳き込む。ここでムゼッタと同棲しているマルチェロを呼び出し、ロドルフォとの愛の生活が、もう壊滅的になったと訴える。実はミミがここへ来る前に、ロドルフォもやって来て、居酒屋で寝込んでいたのである。その彼が起きて外に出て来るので、ミミは急いで物蔭に隠れる。彼はマルチェロに、ミミは病気なんだ、貧乏詩人との火の気もないような掘っ立て小屋の生活では、彼女の命が持たないんだ。いくら愛していても、愛だけでは足りないのだと、涙ながらにうたう。そのときミミが激しく咳き込んだので、彼女はロドルフォに見つかってしまう。お互いにしっかりと抱き合う2人、酒場の中ではムゼッタの嬌声がするので、嫉妬に狂ったマルチェロが駆け込んでいく。小雪がちらつく中、ミミによってうたわれるのが、有名な「ミミの別れ」である。そして「さようなら、甘い夢」という、別れの二重唱になる。ミミはロドルフォの胸に、顔をうずめてむせび泣く。「死のような寂しい冬、だけど春になればまた陽が輝く」と、うたっているところへ、突然マルチェロとムゼッタが外に飛び出して来て、派手な痴話喧嘩を始める。静かに分かり合って別れる2人と、激しく罵り合う2人の対比が、実に絶妙なうちに、四重唱になって幕が下りる。
(C) 出谷 啓
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