第3幕
山の中の寂しい場所で、暗い闇の中、密輸入業者たちが重い荷物を運んでいる。ダンカイロ、レメンダート、ホセ、カルメン、フラスキータ、メルセデスらは六重唱を歌う。カルメンはホセが沈んでいるので、その理由を尋ねる。ホセが母親のことを心配しているのだというと、彼女はそれじゃ、さっさと帰ったらというので、彼は憤然として身構える。この頃のカルメンとホセは、既に巧く行かなくなっていたのだ。カルメンは「殺すとでもいうのかい、人間死ぬも生きるも運命さ」と啖呵を切って、女の仲間たちの方へ行ってしまう。フラスキータとメルセデスにカルメンが加わって、カルタの占いが始まる。カルタは何回切っても、カルメンには凶と出る。彼女は「ああ、死ぬ私が先で、あの人が後」と絶望の声を上げる。
そこへダンカイロが偵察から戻ってきて、仲間たちに出発を命じ、ホセを見張りに立たせる。しばらくして案内人に連れられて、ミカエラがあらわれる。彼女はここで、この場所がどんなに恐ろしくても、ホセの母からの伝言は何とか伝えようと歌う。これが「ミカエラのアリア」である。彼女は見張りに立つホセを近寄ろうとするが、ホセが突然発砲するので、驚いて岩陰に身を隠す。そこへ危うく銃弾を避けたエスカミーリョが登場、好きな女に会いに来たとホセに告げる。「好きな女だって」と問うホセに、「そうだ、カルメンという」と答えるので、嫉妬に狂ったホセは短刀を抜き、エスカミーリョと取っ組み合いの喧嘩になる。銃声を聞いて駆けつけたカルメンが二人の間に割って入って、刺されそうになったエスカミーリョを助ける。彼は一同に「近日中にセビーリャで闘牛があるので、ぜひ見に来てください」と言って退場する。
一同が出発しようとすると、レメンダートがミカエラを見つけて引きずり出してくる。彼女は、ホセの母親が危篤で、ぜひ一度帰ってきて欲しいと言っていると伝えるので、ホセもしばらく山を降りる決心をする。すると遠くからエスカミーリョの歌う「闘牛士の歌」が聞こえて来る。それを聴いて、歌声の方に駆け出そうとするカルメン、彼女の前に立ちはだかるホセ、そんな張りつめた気分とは反対に、密輸入業者たちは重い荷物を肩に、のんびりと出発する。
(C)出谷 啓
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