時:中世
所:イースト・アングリアの沼沢地のカーリュウ・リヴァーのほとり
あらすじ:
劇場全体が中世初期の教会内部と想定されており、中央に仮舞台があり、その舞台の情景はカーリュウ・リヴァーの河畔と設定されている。
修道院長、修道士たちが無伴奏聖歌を歌いながら行列を作って舞台の方に進み出てくる。楽器を演奏する修道士は楽器の方に行く。修道院長が中央に進み出て、つい最近カーリュウ・リヴァーの河畔で、神の恩寵のしるしが授けられた、その奇蹟劇をここで御披露しましょうと言う。各役を演ずる修道士は衣裳を着け始め修道院長及びその他の修道士たちは渡し舟に乗る巡礼と合唱として席につく。渡し守が現われ、私は渡し守である、このカーリュウ河で毎日渡し舟を漕いでいる者ですと自己紹介し、今日は大事な日なので特に渡る人が多い、というのは昨年の今日、葬式があったが、その人の墓にお参りすると霊験あらたかとの噂が拡まり、命日の今日は特に近郊の人々が多く集まるからだと説明する。渡し舟は満員でもう出る寸前である。そこに旅人が来て、自分は西国から来た者だが、遙か遠くの北国に行かねばならない、渡し舟に乗せてくれと声をかける。渡し守はどうぞお乗り下さいと、旅人を舟に乗せてやる。その時遠くから狂女の叫ぶ声がする。渡し守はあの狂女は黒山の方から来た者らしいと言えば、今来た旅人もあの女が歌っているのを聞いて皆が面白がって笑っていたと言いそえる。渡し守が舟を出すのをおくらせて狂女を待ってやろうと言い出せば、旅人、巡礼たちも皆声をそろえて、その女を見てみたい、待ってやろうと言う。狂女はうわ言のように何やら歌いながら近づいてくるが、渡し場に来てはっきりと、愛する我が児は何処へ行ったと言い、子を失った母であることが解る。狂女はく私は黒山の麓に住んでいたNear
the Black Mountains there l dwelt〉と話し出し、一人息子と一緒に住んでいたのに子供がさらわれてしまい、異邦人に東の方に連れていかれたとの噂を耳にしたのでここまで来たのだと物語り、渡し守に舟に乗せてくれと言う。渡し守は何処から来て何処に行くかもわからない人を舟に乗せられるかと応える。舟に乗っている旅人たちは、狂女の歌が面白いと言ってはやす。狂女は怒り、貴婦人の私に対して失礼である、もし私の乗舟を拒むならお前に悪いことが起きますよときつく言い、空を見上げ、野鳥に私の愛児はまだこの世にいるかと問い、渡し守にあの鳥は何と言うのかと訊く。渡し守がカモメだと答えると狂女は、これからはあの鳥を沼地のカーリュウ(日本名:たいしゃくしぎ)と呼んでくれと言う。旅人たちは狂女に同情し、舟は混んでいるが、おくり合わせて乗せてやろうと言い出す。渡し守も、この女は狂っているが、捜しているものは知っているようだと女を舟に乗せてやる。舟は川岸を離れる。
後半へ
オペラ名曲辞典TOP