【あらすじ】
時と所:1860年代・カリノフ(ロシアのヴォルガ河畔の町)
第1幕第1場/カバノフ家の前の河畔
 午後の暖かい陽の射す河畔で、ヂコイ家に雇われているクドリャーシが、カバノフ家の女中グラーシャにヴォルガ河の美しさを語っている。するとそこへ商人のヂコイが甥のボリスを「この怠け者めが!」と叱りつけながらやって来て、女主人は何処かと尋ねる。グラーシャは「公園にいます」と答え家に入っていった。ヂコイが公園に向かうと、クドリャーシがその場に残されたボリスに「何故あんな風に怒鳴られても我慢しているのですか?」と尋ねると、ボリスはその理由を静かに語り始めた。彼は両親の死後、祖母の遺言により叔父のヂコイに全財産を管理され、成長した時にヂコイに礼儀を尽くしていたのなら財産を受け取れると決められていた。今は親戚の所にいる妹のためにも、自分が我慢をしなければいけないのだと言う。饒舌になったボリスは、その後自分が人妻のカーチャに想いを寄せていることもしゃべってしまい、クドリャーシに「そんな不毛な恋は諦めなさい」とたしなめられた。
 そこへカバノフ家の女主人カバニハを始め息子のチホン、その妻のカーチャ、カバノフ家の養女ヴァルヴァラが帰って来るので、ボリスはサッと家の陰に隠れた。カバニハは息子のチホンに市場へ出掛けるよう命じると「最近お前は嫁の肩ばかり持って、私を蔑(ないがし)ろにしているよ!」とチホンを責め出した。チホンも妻のカーチャも「そんなことは決してありません」とカバニハをなだめるが、カバニハはカーチャに悪態をつき、彼女が逃げるように家の中へ入った後も、嫁の態度が悪いとチホンを責め続けた。カバニハが家に入った後、養女のヴァルヴァラまで「あれではカーチャが可哀想!」とどちら付かずのチホンを責めた。
第2場/カバノフ家の居間
 カーチャがヴァルヴァラに、結婚する前の自分がいかに自由で気楽だったかと話している。そして姑に冷たくされる毎日を嘆くと、そのせいか最近自分は浮気をしたくなると告白した。相手の当てはある様だった。「それでは行動に移してみては?」というヴァルヴァラに「とんでもない!」とカーチャが返したところに、夫のチホンが旅立ちを知らせに現れた。カーチャはチホンに抱き付くと、自分の悪い考えを打ち消してほしいと言わんばかりに「どうぞ私も連れていって!」とせがむが、カーチャの本心など微塵も気付かないチホンは「我慢して待っていてくれ..」と妻をいさめた。「ではせめて貴方のいない間、他の人とは関わらないように命令してってくださいな」とカーチャが言うと、姑のカバニハが現れて「夫が留守中の妻の心得」をカーチャに命じていけと息子に言う。チホンは嫌々ながら「姑をたて、よく働き、不貞を働かない」などのセリフをカバニハに復唱させられると、追い立てられるように玄関へと向かった。別れを惜しみチホンに抱き付くカーチャを、カバニハはまた「はしたない!」と罵った。

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