【あらすじ】
時と所:1830年頃・イギリス東南部の小さな漁村
プロローグ/海辺にある村の集会所の一室
集会所に仮法廷が設けられ、漁師のピーター・グライムズが「船員の少年死亡」の件で証言を求められていた。ピーターは少年が時化で漂流中に脱水症状を起こして死んでしまったと不慮の事故を訴えるが、舟の持ち主であるピーターには村人たちの疑いの眼差しが向けられていた。結局「今後少年は雇わないこと」という勧告のみでこの件は事故死の処理がされ、「少年を雇わなければやっていけない!」というピーターの必死の訴えは聞き入れられずに審理は終わる。人々が退廷すると、女教師で未亡人のエレンだけがうな垂れるピーターにそっと慰めの言葉を掛けた。
間奏曲1「夜明け Dawn」
第1幕
第1場/酒場「ボアー亭」近くの海辺
ピーターの無罪判決が出てから数日後、海岸では朝から漁師たちが舟や漁具の手入れをしている。少年の死亡事故の一件以来、村人たちから敬遠されているピーターを手伝う者は誰もなく、見かねた船長のバルストロードと薬剤師のネッド・キーンが手を貸してやる。ネッドは「孤児院から新しい働き手の少年を連れて来る」とピーターに言うが、周りの者が孤児の売買を激しく非難するので、今度は女教師のエレンが「罪なき者、石を持て打て Let her among you without fault cast the first stone」と聖書の言葉を引用して歌い彼を庇うと、自らその孤児を引き取りに行くと言う。やがて双眼鏡を眺めていたバルストロード船長の「嵐が来るぞ!」という言葉で人々は解散し、多くは近くにある酒場の「ボアー亭」へと入って行く。残されたピーターにバルストロードが「都会に出て大きな船に乗る方がいいんじゃないか」と勧めてみるが、ピーターは「この村で金を貯めてエレンと結婚したいのだ」と将来の夢を語る。
間奏曲2「嵐 The Storm」
第2場/ボアー亭
閉店間際の店の中では、嵐に怯え二階から下りて来た女将の姪二人が、酔った漁師のボブに絡まれていた。そこへ船長のバルストロードがやって来て、ボブを押さえ付け娘たちを助ける。東インド会社代理人の未亡人セドレー夫人は、薬剤師のネッドから「ご要望の睡眠薬(阿片)が欲しければ、今夜ボアー亭で…」と言われ店に来ていたが、嵐のせいか薬を積んだ馬車が未だに到着しないので苛々している。そこへピーターが現れ、いきなり訳の分からない歌を大声で歌い出した。店の中は一瞬険悪な雰囲気になるが、バルストロードの計らいで全員の楽しい輪唱が始まり、すぐにその場は和む。歌の途中で店の扉が開き、孤児の少年を連れたエレンが馬車屋と共に入って来る。ずぶ濡れの彼らを見て皆は体を拭いてやろうとするが、ピーターは「家に戻る!」と言い、すぐに少年を連れ店を出て行く。
第2幕へ
オペラ名曲辞典TOP