【あらすじ】
時と場所:1185年プティーヴリの町およびポロヴェツ軍の野営地
<プロローグ>
プティーヴリの町の広場
兵士たちと町の人たちの合唱<輝く太陽にほまれあれ>(Solncu krasnomu slava!)(ロシア正教の聖歌風)で幕があがる。(この合唱曲は唯一ボロディン自身が完成させた曲である)イーゴリ公が登場し、「我らは今、ポロヴェッツ人と戦わなければならない!」と皆に伝える。コンチャック汗率いる遊牧民族のポロヴェッツ人が、南方から侵略してくるからだ。その時、突然日蝕が起こる。人々はこれを天の啓示として、悪いことが起こる前触れではないかと恐れる。町の人々が反対するにもかかわらず、イーゴリ公は「私たちの運命は逃れられない、ロシアのために戦おう!」と訴える。出兵の時、イーゴリ公の二番目の妻ヤロスラヴナはイーゴリに、「嫌な予感がするから行かないで傍にいてほしい。」と哀願するが、彼は「祖国を守るためだから仕方がない」と言う。イーゴリは留守を、ヤロスラヴナの兄ガリツキー公に託した。ガリツキーは怪しい笑みを浮かびながら、これを引き受ける。
<第1幕>
第1場/ガリツキー公の邸宅
内心、イーゴリ公への反逆心を抱いていたガリツキー公は、留守を任されたのをいいことに、好き勝手な振る舞いをしている。ガリツキーのアリア(ようやく待ち望んだ時がきた、プティーヴリ公の座にすわれる時が)<Tol’ko b mne dozdat’sja cesti>。イーゴリの軍隊に参加しなかったガリツキーの部下、スクーラとエローシュカの二人は、陽気にグドーク(弦楽器)を奏で、ガリツキーもそれに加わる。そこへ町の女たちが登場し、ガリツキーに、彼の手下が誘拐した娘を戻すように命令してくれと嘆願する。しかし、彼は耳を貸さず女たちを追い払い、再び酒を呷る。
第2場/ヤロスラヴナの邸宅の一室
イーゴリ公の妻ヤロスラヴナは、イーゴリや息子ウラディーミルの安否を気遣う。アリア<長い年月が過ぎ去った>(Ne malo vremeni proslo s tech por)。町の女たちがやって来て、ガリツキーに取り合ってもらえなかった、誘拐された娘のことと、ガリツキーの暴状を訴えた。そこへガリツキーが偶然にもやって来る。ヤロスラヴナは女たちに代わって、兄のガリツキーに娘の釈放を訴える。しかしガリツキーは侮辱的な態度であしらう。ヤロスラヴナは怒り、出て行くように命じる。その時、イーゴリ公の軍の使者が戻ってきて、「イーゴリ公と息子は捕虜になり、敵軍のポロヴェッツがこちらに迫っている」と伝えた。そして敵がプティーヴリの町に火を放つ。町の人々は、もう神に祈るしかない状況まで陥った。
つづく
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