第1幕
1938年の初め、ドイツとオーストリアの合併問題がようやく現実的なものになって来た頃のオーストリア。アルプスに近いここノンベルク修道院では、今まさに夕べのミサが行なわれている。しかし、志願修道女のマリアの姿が見えない。彼女は修道院の裏山に登って、大好きな歌を歌っているうちに、ミサに遅れてしまったのだ。マリアにとってこんなことは別に珍しいことではない。何事も規則どおりにするのが苦手、お祈りの時刻にはいつも遅れて来るのが当たり前、だが底抜けに明るい性格のために、誰も彼女を憎めない。そこで修道院長は、マリアを一度修道院の外へ出してみようと思う。マリアにとって嬉しいような、また少し怖いような修道院の外の世界、それは厳格な海軍の退役大佐、フォン・トラップの家庭であった。大佐は妻に先立たれた後、7人の子供たちを厳しく育てていた。しかし長女のリーズルを頭とする子供たちは、まだ遊びたい盛りだった。家庭教師の役を仰せつかったマリアは、子供たちをのびのびと自由に遊ばせ、歌を通じて次第に彼らの気持ちを解きほぐし、「ドレミの歌」などが楽しく歌われる。ウィーンへの小旅行から帰った大佐は、婚約者のエルザを連れて来て大舞踏会を開く。大佐は喜んで歌を歌うようになった子供たちを見て驚き、マリアにも強く惹かれている自分に気付く。大佐の見つめる目に熱いものを感じ取ったマリアは、自分の心が怖くなって修道院に戻ってしまう。だが悩むマリアに修道院長は、いくら逃げても問題は解決しませんと、「すべての山に登れ」を歌って力強く励まし、勇気付けるのであった。
(C) 出谷 啓
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