【あらすじ】
時と所:1930年代・マハゴニー市(北米の架空都市)
第1幕(各場面に状況を表す字幕が映し出される)
第1場/荒野「マハゴニー市誕生」
 荒野の真ん中で1台のトラックが故障して動かなくなった。中には売春斡旋と詐欺の容疑で指名手配中の逃亡犯、未亡人のベグビック、帳簿係のファッティ、三位一体のモーゼスが乗っていた。3人はオンボロトラックがもうこれ以上動かないと分かると、この地に「マハゴニー」という楽園の街を作り、やって来る男たちから金を巻き上げようと考えた。
第2場/新しい街マハゴニー「都市は数週間であっという間に発展し、最初の鮫たちが街に漂流して来た」
 マハゴニーに売春婦のジェニー・ヒルと6人の若い娘たちがやって来て、酒と金が欲しいと「アラバマ・ソング Alabama-Song <ああアラバマの月よ Ach, Mond von Alabama>」を歌う。
第3場/各国、各都市「新しい楽園のニュースが広まる」
 ファッティとモーゼスが各国の大都市を訪れ、マハゴニー市に男たちを誘い入れるために宣伝して回る。
第4場/数年後のマハゴニー「数年の間に、マハゴニー市には各地から不平分子が集まった」
 アラスカで樵(きこり)をしていたジム、ジャック、ビル、ジョーの4人の男たちも、貯めたお金を持ってマハゴニーへ行こうと旅支度をし「アラバマの月よ、我がために輝いておくれ Schoener gruener Mond von Alabama」と歌う。この先に待っている酒や女やギャンブルといった、素晴らしい世界を思い浮かべながら。
第5場/港「マハゴニー市に来た者の中に、ジム・マホーニーがいた。彼の話である」
 4人の樵たちがマハゴニーの港に着くと、未亡人のベグビックが売春婦のジェニーと6人の女たちを連れてやって来た。べグビックは早速娘たちを売り込むが、ジャックは金額が高いとこれを値切り、値が下がらないと分かるとさっさと断る。しかし結局はジムがその売春婦ジェニーを買った。そこへ大きな荷物を持った人々が現れ、ジムたちの前を足早に通り過ぎて行く。皆港からマハゴニーを出て行くようだ。4人の男たちは「こんなに沢山の人々が出て行ってしまう所が、果たして本当に素晴らしい場所なのか?」との不安を抱くが、べグビックたちに連れられ街へ向かう。
第6場/街中(背後にマハゴニー市の地図が映し出される)
 アラスカから来た樵のジムと、売春婦のジェニーが一緒にマハゴニーの街を歩いている。ジェニーは「貴方の好みに合わせたいわ!」と、下着を着けた方がいいかとまで尋ねるが、ジムの「君の望みは何だい?」との問い掛けに対しては「そのセリフはまだ早いんじゃないかしら?」と返した。
第7場/金持ちホテル内のバー「全ての大事業には危険が付き物」(背後にはマハゴニーの犯罪状況、財政状況の統計が映し出される)
 マハゴニー市からは多くの人々が去って行った。未亡人のべグビックがバーに入ると、帳簿係のファッティと三位一体のモーゼスが「金が入らなけりゃ何もやる気になれないよ…」と、金儲けがうまくいかないことを嘆く。その上逃亡者の3人には「すぐ隣町のペンサコラまで追手の警察官がやって来ている」という情報まで入り、益々気持ちが沈んでいく。
第8場/港「真実を追い求める者は失望する」
 ジムはどうにも胡散臭いマハゴニーの街を出て行こうと決心するが、結局は友人たちに説得されまた街へ戻る。
第9場/金持ちホテルの前
 男たちがホテルの前で煙草を吹かしている。辺りの壁にはべグビックたちの貼り付けた「お静かに!」「下品な歌禁止」「椅子を大切に」など数々の禁止を謳う貼紙がある。ピアニストの奏でる<乙女の祈り>が流れて来ると、ジャックは「素晴らしい芸術だ!」と聴き惚れるが、ジムは「型に嵌まった平和なんかで幸せになれるものか!こんな酷い街はない!」と怒鳴り出し、騒ぎを聞き慌てて出て来たジェニーに宥められる。それを見ていたべグビックたちは「こんなに満たされた楽園のどこが不満なんだ」と顔を歪める。
第10場/「ハリケーン」「マハゴニーにハリケーンが接近中」
 マハゴニーにハリケーンが接近し、辺りには強風が吹き荒れ始める。人々は足早に去って行く。
第11場/「恐怖のこの夜、平凡な樵ジム・マホーニーは<人間の幸せの法則>を発見する」(男たちが<魔笛>の旋律でハリケーンの恐怖を歌いながら通り過ぎる)
 ジムは周りの皆が怯えて避難する中「ハリケーンだろうが人の手だろうが、どうせ全て破壊されるのだ!一番大切なのは命を守ること。くだらない禁止令など無駄なことだ」と1人笑い出した。そして「欲求を満たすためには何でもありだ!好き勝手やろう」と言うと皆もジムに賛同し、べグビックは仕方なく禁止の貼紙を外す。そこへモーゼスがやって来て「ペンサコラがハリケーンで壊滅した」と告げるので、べグビックは「隣町まで来ていた追手の警官もこれでやって来れまい」とほくそ笑んだ。

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