第2幕 男爵の地下金庫
アルベルトの父、年老いた男爵にとって、今日は特別に幸福な日だった。というのも、彼の六番目の金庫がついに金で一杯になったのだ。男爵は大切な金庫を点検するため、まるで恋人のもとを訪れるように、こっそりと地下室に降りて行った。そして金庫の鍵を開けながら、男爵は恍惚と恐怖に包まれる。恍惚、それは彼の富が彼に与える限りなき力、恐怖?それは金にしみついた、数えきれない涙と怨念の呪いだった。男爵は幸福を祝う儀式として、全ての金庫の前に一つ一つ蝋燭を灯した。すると明け放たれた六つの金庫から眩い金の煌きが彼を照らし出した。彼はうっとりと想像の翼を広げ、「この金で何が出来るだろう!」と夢見た。「並ぶものなき権力」それが彼の欲望の全てである。しかし次の瞬間、年老いた男爵は、やがて訪れる「死」に思い至り、たちまち幸福と権力の夢の絶頂から、絶望と無力感の深い淵に突き落とされる。男爵は「たとえ死んでもこの金を浪費家の息子には渡すまい?」と思案する。
(第2幕は男爵のモノローグとオーケストラだけで構成されている。緊張の緩むことのないオーケストラと、独り哀楽を彷徨うバスの暗い響きが、金に執着する男爵の狂気をみごとに表現している。)
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