【あらすじ】
時と所:第1部→1888年・プラハ及び月世界、第2部→1420年・プラハ
<第1部>「ブロウチェク氏の月への旅行」
第1幕
第1場/居酒屋ヴィカールカ亭前の小路
聖ヴィート大聖堂の堂守の娘マーリンカは、恋人のマザルがブロウチェク家の家政婦ファンチと踊っていたと言って怒り、「それなら私はブロウチェク氏と結婚するわ!」と叫ぶ。居酒屋から飛び出したマーリンカを追って出たマザルは、全く取り合わずに笑いながら彼女を抱き締めキスをするが、近くの家から出て来たマーリンカの父が二人を引き離し、マーリンカはその場から立ち去る。堂守である父は、娘が売れない画家のマザルと付き合うことに反対だった。その時、芸術家たちが陽気に歌う居酒屋ヴィカールカ亭の中から、ブロウチェクが出て来る。ブロウチェクはかなり酔っていたが、家主である彼はマザルを見るなり滞っている家賃の支払いを迫った。しかしマザルは酔って足元のおぼつかないブロウチェクを「貴方は月からやって来たのですか?」と軽くあしらうと、店の中へと姿を消した。一人残されたブロウチェクがふらふらと歩いていると、「誰も私とは結婚してくれない」と嘆く傷心のマーリンカと出会う。「それでは私としましょうか?」とブロウチェクが調子よく言うと、マーリンカだけでなく父親の堂守まで出て来て「嫁にもらってくれるのですか?」と言う。するとブロウチェクは「月の上でなら…」と呟き、再びふらふらと歩き出した。マーリンカは父親と一緒に一度は家に戻るが、すぐに恋人のマザルがやって来て窓からそっと甘い言葉を囁くので、彼女はこっそりと家を抜け出し二人で夜の闇に消えた。
一方のブロウチェクは、酔ったまま古城の方へと歩いていた。そこへ居酒屋のボーイがやって来て、ブロウチェクの忘れたソーセージを渡す。ブロウチェクはそのソーセージを持って古城の階段を上り始めるが、いつしか彼の体は浮き上がり、月へ向かって飛んでいた。
第2場/月の世界
目を覚ましたブロウチェクの目の前に、ペガサスに乗ったマザルがやって来た。後方には鶏の足の上に建つ城が見える。しかし名前を呼んでもマザルは答えず、自分は月の詩人で青空の化身だと言う。そして自分の所有する家の自慢や女性の話など、俗っぽい話しかしないブロウチェクに、青空の化身は「もっと愛や美などの神々しい話はできないのか」と溜息を吐いた。そこへ堂守に似た月森の化身と、娘のマーリンカに似たエテレア姫が現れた。エテレア姫は侍女たちと楽しそうにワルツを歌っている。月森の化身はブロウチェクの姿に気付くと「珍しいお客の正体が何なのか、文献に載っているかもしれない」と言い、城へ本を探しに戻った。エテレアを愛している青空の化身は、彼女を賛美し愛を語ると、ブロウチェクにも跪くよう促した。しかしブロウチェクが気軽にエテレアに話しかけるので、反ってそれが彼女の気持ちを捉え、エテレアはすっかりブロウチェクを気に入ってしまった。するとエテレアは青空の化身が乗って来たペガサスにブロウチェクを乗せると、二人で何処かへ飛んで行ってしまう。絶望した青空の化身は、本を片手に戻って来た月森の化身と共に、ただ狂ったように笑うしかなかった。
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