【あらすじ】時と所:19世紀初頭・ドイツの小さな軍隊駐屯場
<第1幕>
第1場/大尉の部屋
 元理髪師の兵士ヴォツェックが、大尉の髭を剃っている。大尉はヴォツェックに焦らずゆっくりと剃るように命じると、育ちの悪いヴォツェックに説教をし始めた。そのうち私生児を持っていることまで非難するので、ヴォツェックは「神は誰にでも平等なはず。貧乏人には道徳的な振舞いなど無理です。」と訴えた。大尉は彼の口答えに気分を害し、髭剃りが終わるとすぐにヴォツェックを退室させた。
第2場/町外れの野原
 下級兵士のヴォツェックが、友人の兵士アンドレスと共に枝切りの作業をしている。日の暮れかけた静かな野原に、不気味な何かを感じたヴォツェックは、茸の群生を見つけると「あの場所には首が転がっていて、それをハリネズミと間違え持ち上げた男が3日後に死んでいる!」と言い出した。アンドレスはそんな訳ないと、陽気な歌を歌い笑うが、ヴォツェックはその歌を制すると「地の底から炎が燃え上がっている!」と薄暗い地面を見て怯え、「この静寂も世界の終わりの前触れでは?」と震えた。
第3場/マリーの部屋
 ヴォツェックの内縁の妻マリーが、窓辺で息子をあやしていると、目の前を軍楽隊が行進していった。マリーが先頭を行く鼓手長に見とれているのを見て、隣りに住むマルグレートが冷やかしに下品なことを言うので、マリーは怒って彼女を追い返し、乱暴に窓を閉めた。マリーは未婚でその子供も私生児であったが、彼女は「例えお金は無くても、子供が幸せを運んでくれる..」と子守歌を歌い、息子を寝かしつけた。そこへ作業帰りのヴォツェックが通りかかる。彼はマリーにも「野原の地が燃え上がっている!」と訳の分からないことを言い、自分の子供には目もくれずに立ち去った。マリーはそんな我が子を不憫に思い、深い溜息を吐いた。
第4場/医師の研究室
 ヴォツェックはお金のために、ある医師の生体実験の実験台になっていた。医師は「今週は豆しか食べてはいけない!」などヴォツェックに数々の規制を出していて、定期的に実験の成果を確認している。この日も訳の分からないことを言う、錯乱したヴォツェックを見て「これはまさしく精神錯乱の第二期だ!研究成果が認められ、私の名声が世に出る日も近い!」と実験が順調に進んでいることを喜んだ。
第5場/マリーの家の前
 マリーが家の前に立っていると、先日軍楽隊の行進で見掛けた、鼓手長が通りかかった。マリーが彼に色目を使うと早速鼓手長はそれにのってきたが、いざとなると理性が働き、マリーは近づく鼓手長に抵抗した。しかし強引に迫られ、結局彼を家の中へ入れてしまう。

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