2000-01

皆さん明けましておめでとうございます。皆さんどのようなお正月をお迎えになりましたでしょうか?
今年が皆さんお一人、お一人にとりまして素晴らしい年となりますように心からお祈り申し上げます。

“おかげさまを持ちまして、無事にリサイタルがおわりました”
12月23日。お天気に恵まれたその日は音楽の友ホールに満員のお客様を迎えてのコンサートとなりました。私が東京にいたときからの友人、合唱団の仲間、岩手大学時代の仲間、そして、恩師である佐々木正利先生、伊原直子先生、またチラシやこのHPを見て御出でくださった方々を含め、250人においでいただきました。本当にありがとうございました。
ピアノの長町さんに支えられて最後までたどりつきましたが、終えてみると、やはりリサイタル、というのは大変だなあ、とツクヅク感じています。

代々木上原ムジカーサでのリハーサル
今回のプログラムが果たしてどういう感じにしあがっているか、実際に本番をする前に親しい友人や先生を呼んでとうして歌ってみることを"run through"といいます。何でも話せる信頼できる友人たちを呼んでしますので、当然終わった後は“あそこの発音が、、、、””音程が、、、、、”とか時にはプログラムの曲順についての意見を交換します。
これが非常に重要で、信頼できる友人からの意見なので、彼らも決してお世辞を並べ立てる、と言うようなことはせず、いいところは誉め、直すべきところは直してくれます。わたしもNYを立つ直前、12月13日にRUN THROUGH を行い、7人ほどの友人に来てもらい、率直な意見交換をし本当に貴重な機会を持つことができました。
数人とはいえ、お客さんを前にして歌うので、私にとってもペース配分を知る上で大変に役に立つ練習です。実際に今回も日本歌曲を 4曲準備していたのですが、実際に歌ってみると、その後に大きなアリアが控えているので一曲省略することにしたのもこの練習があったからこそ分かったことでした。
こういう風に一度本番をしているので、”一度やっている!”というかすかな自信がいくらか救ってくれたように思います。
しかし体調だけはどんなに気を使っていても、思いがけず崩れるもので、本番の前の晩も一晩中気持ちが悪くて、変な話ですがトイレで一晩を過ごしていました。やっぱり緊張してるんだなあ、、、、と開き直るより仕方が無かったひとばんでした。そしてまた体力勝負、と言われることの意味を少し分ったような気にもなった一晩でもありました。

今回のプログラムはNYで本番をこなしているものが主だったので、体に入っている曲が多く、体調が今一つだったものの、集中して歌うことができました。
特に今回は本番をしながら時々楽しむ余裕もあることに気づきました。きっとこれはJOCに入ってからのクラスでのせいかがでているのではないか、と思っています。
そのクラスはフランク コルサロ先生(演出家)がしてるクラスで、各自歌いたいアリア、歌曲、シーンなど何を歌っても言いのですが、その曲を使っていろいろ名自分の感情、心理、を探っていくクラスです。
例えば私がカルメンのハバネラを持っていったときはキャスターのついた黒板をフルに活用しながら、まるでストリッパーのように、徹底的に見る人じらして、といわれたかと思うと、長椅子に誰顔とこの人が寝ていると想定して、その気にさせるようにからかってみて、といわれたり、ありとあらゆるアプローチの仕方を一曲を使って探っていく、と言うような具合です。フランクに言わせると。”真希子はどうも色気を出せるのにわざととぼけて出さないようにしている”、ということで、その後はしばらくカルメン、ダリラなどの色気を必要とする役のアリアを集中して稽古してもらい、色気があるような“振り”をするのではなく、”私の中からそういうもの(色気、誘惑心などなど)を引き出し、それを発展させる。という日が続きました。

最近こそカルメンなどをやっていますが、始めの頃は日本歌曲を持ってくるように言われました。
クラスの誰も日本語は分りませんが、もしも私が本当にその曲を理解し、その曲に入っていれば言葉を超えて聞く人には伝わるはずなので、まずは自分の心の動きがもっとも敏感に反応できる母国語の単純な曲から始まりました。
私は“叱られて”を持っていきました。これは私の父がよく口ずさむ曲で、父のこと、家族のこと、故郷を思い出す曲なのですが、その気持ちに集中して歌うと、なるほどその一つ一つの歌詞はわからなくても、その曲に寄せる私の気持ちがちゃんと伝わっている、というのです。
ところがいざ外国の曲を歌おうとすると、どうしても私は(他の人も)その曲のあらすじやアイディアを伝えようとばかりしてなかなか”叱られて”を歌ったときのように、素直に自分自身を委ねることができない。“私今悲しいんですーーーーーー!”とその歌詞の説明をするような歌いかたをしてしまうのです。
しかし毎回のクラスで恥じをかきながらもめげずに持っていくと、次第に頭と体と声のギャップが埋まっていくのを感じるようになってきました。と同時にそういう感覚になるためには今までの何倍以上にも曲を吟味して自分の理解を深めておかなければいけないことも分りました。

今回のリサイタルのなかではそういう練習のかいがあったのか、”今私はこういう曲を歌っているんですーーーーーーー!”と聞く人に説明をするような歌いかたをすることが少なかったように思います。もちろんまだまだやらなければ行けないことは山のようにありますが、小さなこの一歩を大切にしてまたがんばりたいと思います。

今日はジュリアードでしている練習と今回のリサイタルについて絡めながらお話させていただきました。
今はオペラ”ルクリーシャの恥辱”の最終稽古に入っています。本番は2月2、4、6日です。この頃NYにおいでになる方がいらっしゃいましたら、連絡下さい。
冬本番、皆さん風邪をひかないように気をつけてお過ごし下さい。それではまた。



このリハーサルに、指揮者の井上道義先生がお見えになりました。
鳴海さんは2001年末に、井上先生の指揮で大阪フィルの第九が決まっていましたが、
体調が優れず出演することが出来ませんでした。(佐々木:記)

HOME目次つぎのページ