2か月も前のことだったか。 NHKから電話ですということで出たら、Kさんということだった。
いつも決まりの「私の名前が何故?」と受けた。
この頃色々なところから電話があるとまず聞くことである。
「私の名前・電話番号がどこからでるものかの情報をまず知りたい」ということである。
相手の答えは色々である。
「大学で聞いたらりんごの事なら名誉教授の・・」「インタ−ネットでりんごによく先生の名前がでてくるので・・」「青森県のりんご果樹課からの紹介で・・・」「りんご対策協議会からの・・・」と色々ある。
「では私のホ−ムペ−ジをご覧になってのことですか、もしまだならご覧ください。検索するとすぐでますから・・・」「公開の原則で立ち上げていますから・・」「ご利用なさるのは結構です・・・」「引用の出所をはっきりしていただければ・・・」「その中で疑問があればお答えをしますが・・・」「インタ−ビュ−とかテレビへの出演はこの頃総てお断りしていますので、ご了承してください」がいつもの答えである。
今度のKさんの電話は少し違っていた。
「りんごをテ−マで番組をつくことになっているので」ここまではいつもと同じである。「先生の”りんごと健康”の本を拝見しているのですが」「NHKの資料室からかりてきて」との話しであった。
「今電話よろしいでしょうか」とそれから何回電話で質問・答えを繰り返したことであろう。
久しぶりの事だった。こちらもいつになく饒舌であった。
専門のことをわかりやすく話すことの難しさを思った。でもよく勉強しているようだ。分からないことを聞いてくる。
「研究をはじめられたわけは・・・」「その当時は・・・」「血圧計は・・・」「ナトリウム・カリウムとの関係・・・」「グラムではなくミリエクウイバレントの意味・・・」などなど。
そのうち昔の資料を見たいと言い出した。
「先生が研究しているところの写真があるでしょうか」「ありますよ。でも研究室ではありません・・たった一枚。それを昔NHKで家に取材にきて、撮ってゆき、放映されました。名前は出なかったけれど、あれは先生に違いないと電話がきたことがありましたよ。こちらは写真のシャッタ−をおす役だったから自分のはほとんどありません。昔講義をしているときのをいただいたことがありますが・・・」「この中の100グラムに0.1グラムはカリウムのことです。多要因で考えなくてはとの疫学研究のことを・・・」
「その資料を見せていただきたいのですが」「丁度青森に行きますので、時間をとっていだけないでしょうか」「うん−その日は予定があるのですが・・・大学の名誉教授応接室がありますが、そこでどうでしょう・・・」「お宅へ伺いたいのですが、シナリオをお送りしますからその中の丸印をしているところの資料をご用意いただければ有り難いのですが」「狼の森は近くですか、できれば案内していただきたいのですが・・・」
NHK-TVが毎朝やっている「生活ほっとモ−ニング」のデイレクタ−のKさんであることが分かった。「シナリオ」をFAXで送ってきた時に。
その時の「シナリオ」についてかれこれ書くことは差し控えよう。昔を知らない人の頭の中が少し分かった気がした。NHK番組にある「その時・歴史が動いた」ではなく「その時何を考えたかが問題だ」「脳溢血」の問題をどう理解しているかが。
今度わかったことはNHK放送用語規定では「脳卒中」ではなく「脳出血」に統一しているということだった。
昔血圧を計って「りんご」との関係を推測させることになった「狼の森」はここ10年いっていないけれどどうなっているかしら。下見をしにゆかなくては。久しぶりに工藤ミチエさんに会うことできた。昔保健館の前で撮ったりんごを片手の子供が今は学校の先生でということも。
11月20日午前9時自宅へ借り上げ北星タクシ−で、ハイビジョンのカメラマンとお手伝いと3人でやってきた。お手伝いのコ−ド持ちの人をみたとき、長男が卒業後職がなく、TVのアルバイトをしていた時のことを思い出した。
予定は何時までか。
結局は午後4時すぎまでかかって、一便早く帰京した。前の日は市内で夜遅くまで料理の取材をしたとのことだった。
「天気でよかったですね。でもりんごの収穫はほとんどおわっていますが」
「誰が出るのですか、いつもでるY先生ですか」「いやY先生のことは知りません。T先生です」「どなたの推薦ですか」無言で答えはなかった。「T先生がでるのなら貴方はでる要は無いでしょう」
問題は撮ったものがTVにどう出るかである。
「その為にホ−ムペ−ジを立ち上げているのです」「でも先生も人に知らせることも必要でしょう、わかりやすく」「タレントさんが毎日やっていますよ、内容に問題はあるといつも思っていますが」「私の資料をどうとりあげようとデレクタ−の自由です」
「でも当時は(あだり)は運命的に考えられていて、社会問題だという新聞記事などありませんでした。公衆衛生上の問題点を指摘し、分からないものの謎ときだったのです」
「疫学とは」「高血圧とは」「血圧論とは」「血圧をどう計り記録するか・・」「ナトリウムとは」「カリウムとは」
「私のやったことは疫学研究で、臨床とか生理・薬理学的な研究ではありません」「治療ではなく予防です」「理論は色々ありますが。 私の理論は「ナトリウムとカリウムとの比」を問題にしたのだけれど・・・。初めの疫学研究上の手がかりを停年まで追跡して・・・」と話し出すと止まらない。
カメラマンはこっくりこっくり、お手伝いはじっと無言である。
狼の森まで案内した。
すっかり変わってしまって。この道を自転車で調査にいったのです。
俳優さんを使えばもっと良いイメ−ジになるのかとも考えた。何回か撮った。この中でどれだけ使うのか。
11月30日午前8時35分「生活ほっと」は始まった。一応録画をとっておこう。
タイトルバックのヘスペリスたちの絵は修がドイツから送ってくれたものだ。
「版権はどうなのでしょう」とKさん。「よいでしょう」とカメラマン。「りんごと健康」の本にも引用しました」と私の会話があった。
始まるとすぐ電話があった。京都の藤原元典先生の奥様からだった「生前主人がいつも朝晩りんごをたべるようにいっていました」と興奮気味であったと受けた家内がいっていた。有り難いことである。「家では毎朝アリナミンを飲んでいます」と云えばよかったのに。
「嫁から先生が出ていると電話があって。今度は先生の名前がでて・・」とは事前には知らせなかった柴垣さんからのであった。などなど・・・。クイズ面白ゼミナ−ル以来の反響であった。
メ−ルには早速「おめでとう 修です テレビ拝見しました 恵美子曰く・・「神様扱い」だそうです」・・・とあった。
見終わったときKさんにFAXを入れた。「NHK-TV拝見。うまくまとめましたね。NaK比のこと」
今度の取材では初めから終わりまで、「取材費・出演費」の話しは一言も出なかった。
「NHKは皆さんの受信料でささえられています」のキャッチフレ−ズそのものであった。
「でもあれだけ言わせて 撮って、うまくまとめたわね 100万円だしても出せないわ 今晩御馳走しましょう」とは家内からの一言であった。(20011130)
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