三無 三悪
月刊健康の最近号を見ていたら「三無」「三悪」について述べている文章があった。
「三無」とはあぶく文明のはびこる現代に目をむけるとき、「歩かず」「手を使わず」「噛まず」といった「三無」が横行しているとの京大の大島清名誉教授の意見であり、「三悪」とは若い学生とつきあっていると「歩かない」「噛まない」「飲み過ぎる」だけでも追放できないかとの島根大の松尾寿教授の考えを述べたものであった。
三つのうちの「歩かない」「噛まない」が共通で、「手を使わない」「飲み過ぎる」も健康には心すべきものと思われる。
大島氏によるとヒトが賢い人としてのホモ・サピエンスが獲得した最大の武器は「言語」であったといい、三百五十万年前に二本足で直立し始めたばかりのときヒトの脳の重さがわずか四百五十グラムだったのに、現代の男千三百五十グラム、女千二百グラムにまで大きくなり、言語脳を確立させてきたのに「咀嚼」による脳の活性化、「手」「足」からの刺激の三つの点をあげていた。
ところが旺文社の受験誌をみると、人類の主な特徴として、「直立して歩くこと」「道具をつくること」「火の利用」「ことば」をあげ、解放された両手や指を自由に使って道具などを巧みに扱うことによって脳の発達を促すと同時に、火の利用によって寒さと暗黒から解放され、食物の調理によって固い食物を噛み砕く力を軽減したことは頭の骨を圧迫していた咀嚼筋が退化したために脳は大きくなり、知能の発達を助けたとあった。
本当はどうなのであろうか。
昔語られた「火星人」のイメ−ジは頭だけばか大きくなった人ではなかったか。
アインスタイン以来の天才とも云われる「ホ−キング博士」が車椅子にのり、指だけ動かしてコンピュ−タによって文章を書き、人工の声を出している姿を見ると、頭だけが総てであるように思われる。色々の人間の持つ能力を失っても「脳頭」だけがぎりぎり人間の存在を示すものであることを思わせる。
「脳と二本足で 万物の霊長」「脳で栄え 脳で滅びる」という「句」がある。現代での警告と受け取りたい。
歩き、手を使い、よく噛んで脳に刺激を与えることは、歩くことの出来る人、手も使える人、歯があって噛める人にとっては毎日脳に刺激がいくから必要なことであろう。
「猿は 虫歯から 落ちる」ともいう。
そして長寿を迎える今日このごろの歯科衛生では「8020」という。八十歳になっても二十本の自分の歯を残すようにとの目標である。
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