食塩と高血圧(座談会)

 (昭和57年7月22日ホテルニュ−オ−タニで行われた)

 

日本人の食生活における食塩

 

五島雄一郎(司会・東海大学内科教授・附属病院長):今日は、最近の高血圧の話題を、食塩を中心としてお2人の先生からおうかがいしたいと思います。

 日本人の食生活が塩づけの食生活であるということが、従来からずいぶんいわれてきました。しかし、塩が高血圧によくないということはいわれてきたものの、非常に問題になりましたのは、きわめて最近のことのように思うのです。

 特に、昭和47年に、厚生省の栄養審議会が、日本人の栄養所要量を発表した際に、食塩の所要量を1日15gといたしました。そのため、日本人は1日15gとらなければいけないのではないかと考える人すらあったように思うのです。その時代、私は15gでは多すぎる、もっと減らす必要があると始終申しておったのですが、やっと昭和54年になって、栄養審議会が定めた食塩所要量は、適正塩分摂取量という表現に改められ、10g以下が適当であるということになりました。

 そういうことから、一般の間にも、食塩摂取量を減らしていくことが、正しく理解されるようになりました。厚生省の発表(昭和55年度の国民栄養調査の成績。昭和57年3月発表)は、13.1g程度に減ってきているということです。しかしその統計をみましても、東北地方と関西地方とでは、塩分の摂取量に5gくらいの地域差がることが明らかにされています。

 そういった点を含めて、佐々木先生、日本人の食生活・食塩と高血圧の問題を、疫学の立場から、諸外国との比較をまじえて、お話しいただけませんでしょうか。

佐々木:私がたまたま東京育ちだったこともありますけれど、昭和29年に弘前へ赴任しましたところ、あの辺には今でいう脳血管疾患、脳卒中ですが、やたらと目立つわけです。土地の人は、これを”あたり”と呼んでおりました。しかも、その成因がよくわからない。そこで、現在の言葉でいうならば、疫学的アプロ−チで研究を進めていった。そうした中で、浮かび上がってきたのが、食生活の中の食塩だったというわけなのです。

 五島先生が栄養所要量の問題について触れられましたけれど、わが国の食生活に塩分が多いことは、むしろ合理的であるという考え方が昔から支配的でした。これは源をたどると、約100年前のブンゲ(G.Bunge)という人の実験にいき着くのでして、野菜などカリウム(K)を多く含む食品をたくさんとっている日本人の場合、食塩を必要とすると信じられておりました。そこに疑問を感じたのが、スタ−トになっているわけなのです。

 

注目される”no-salt”cultureに住むヤノマモ族の調査結果

 

佐々木:ともかく、その時代は、食塩に対する関心が低く、国際的にみても似たような状況にありました。そうした中で、米国ブルックヘブン国立研究所のド−ル(Dr.Lewis K.Dahl)という方が、1944年にケンプナ−(Dr.Walter Kempner,Duke大学)が発表した”rice-fruit-sugar diet)という食事療法の有する降圧効果に注目して、その要因を調べてゆくうちに、ナトリウム(Na)の問題にぶつかった。

 そこで、後で恐らく話しがでるかと思われますが、salt sensitiveとsalt resistantという2つの系統のラットを使って、いろいろの実験を行いました。ド−ル先生の、この非常に優れた仕事が、現在でも国際的に大きな影響力をもっていると考えております。1960年のベルンで開かれた本態性高血圧に関する国際シンポシウムで、先生は、人間における疫学的事実ということで、日本の成績を紹介され、そのために日本人の食塩摂取の多さが国際的に注目されました。

 一方、私は今から16前に米国におりました頃、population surveyによる血圧と、おののの土地の日常食塩摂取量との関係を、グロ−バルな立場−−地球疫学と呼んでおりますが−−で整理を試みました。血圧の水準と分布が、地域的に非常に異なっていることについて、問題提起したわけです。その後、日本に帰り、東北地方を中心に行った研究成果を加えて、1970年にロンドンで開かれた第6回世界心臓学会の席上で報告しました。

 それ以後、いろいろな成績が各国から出てまいりました。特に注目されるのは、1975年Circulation誌に発表した米国ミシガン大学のオリバ−(Dr.William J. Oliver)らの南米ヤノマモインデイヤンを対象にした研究です。

 食塩を全く用いない、”no-salt”cultureに住ヤノマモ族を調査したところ、血圧は収縮期血圧100mmHg前後、拡張期血圧60mmHg前後で肥満もなく、肉体的にきわめてactiveであると報告されました。その後1981年Circulation誌に食塩を用いない生活において、妊娠とか長期の授乳に際しましても、Naのバランスがうまくとられていることも明らかにしております。それと対比されるのが日本の成績で、一方の極に”no-salt”cultureに住むヤノマモ(マ)族がおりその対極に日本人を置いた図式を描くことができるわけです。

 

日本人の塩分摂取の歴史

 

五島:日本人がこんなに食塩を多くとるようになった理由、経緯について、先生はどういうふうにお考えですか。

佐々木:この問題は、人類の歴史の中で、非常に興味のあるものです。ヨ−ロッパは、歴史的にみて、岩塩をとり始めた時期がある。わが国では、縄文時代に、製塩土器を使って、食塩をつくり始めたました。そのことを、お米の文化と結びつけて考えておられる方もありますが、私はどうもそれより少し前ではなかったかと考えております。

五島:東北の住民のほうが、関西よりも塩分摂取が多いのはなぜでしょうか。

佐々木:これも、よくわかってはおりませんが、食品の貯蔵が考えられれます。人々が生き抜いてゆくために、野菜も肉も魚も食べ物を皆塩蔵した。塩づけにすることで、やっと生き延びてこられたと思います。しかしアイヌの食生活をみると、食塩を使っていないのですから、だから、一概にはいえません。

 それと、関西のほうが塩分摂取が少ないといいますが、海岸からはなれた山の中は、どこでも多いのです。おもしろいのは、どこの土地へいっても、”無塩(ぶえん)”の食べ物はご馳走なのです。要するに、山村へ行くと、塩辛い食べ物が多く、新鮮なものは、どこでもご馳走なのです。

 

食生活の欧米化による摂取量の減少

 

五島:いずれにしても、日本人が食塩を多くとってきたということは間違いのない事実であって、世界中から注目されてきているわけです。ところで尾前先生におうかがいしたいのですが、先生はこの問題についていかがお考えですか。

尾前照雄(九州大学第二内科教授):私は、戦後、日本人の食生活は相当変わってきたと思います。最近、私どもが、厚生省の低レニン研究班の研究活動の一環として、全国の食塩摂取状況を調べたところ、地域差はそれほどありませんでした。もちろん、東北の田舎の地域は別でしょうが、摂取量も、昔と比べてかなり減っていると思っております。測定法は、24時間尿を蓄尿してもらい、尿中のNaを測ったので、一番信頼があると思います。それによると、1日平均14-15gという人が多い。しかも一般に若い人のほうが少ないと思っています。年をとった方は日本食嗜好で、どうしても塩を余計にとる傾向にありますが、今の子供や学生は、ずいぶん違うのではないでしょうか。今の子供たちは、食生活が欧米化して、味噌汁をあまり飲まないですね。ですから、今は、日本人の食生活が大きく変化している時期ではないでしょうか。

 1982年6月に、モスクワで開かれた第9回世界心臓学会に出席するために、ソ連へ行ってまいりましたが、食事がとても塩辛いのには驚かされました。日本人よりたくさんの食塩をとっているのではないかと思いました。北欧などでも同じことがいえるのではないでしょうか。

五島:確かにご指摘のように、食生活が西欧化してきて、特に若い人たちが日本的な食事をとらなくなってきていますから、そういう意味でも、塩分の摂取はかなり減ってきているようですね。

佐々木:私も同感です。青森県内の26名の農民の食塩摂取量を、3日間連続蓄尿により同一人物で20年前と比較したところ、摂取量が17gから12gへと低下していました。一般的にいって若い人ほど、昔のようにたくさん食塩をとっていないと思います。

 

食塩摂取と高血圧の発症

 

五島:次に、話題を少し変えまして、食塩の過剰摂取と高血圧の発症との因果関係について、尾前先生、お話しいただけませんでしょうか。

尾前:これがわかったら、高血圧の問題の半分以上が解明されるほど、非常に重要で難しい問題です。食塩と高血圧でいつも問題となるのが、異なった集団の間では、佐々木先生がおっしゃいましたように、食塩摂取量と血圧とは、有意の正の相関が認められる。しかし、同一の集団についてみると、両者の間の関係が認められないとする成績がほとんどなのです。どうしてそうなのか、わかっておりません。

 この点につおいては、ニュ−ジ−ランドのシンプソン先生(Otago大学Wellcome医科学研究所)が、興味ある仮設を出しておられます。つまり、両者は直線的な関係ではなく、食塩摂取量の非常に少ないところでは高血圧の頻度が低い、また、食塩摂取量の非常に多いところでは頻度が高くなるが、中間のところでは高血圧の頻度は変わらない。という仮設です。同一集団でみると、この中間程度の食塩摂取量のところが多いので、食塩摂取量と高血圧の間に関連がないような成績がでるのではないか、というわけです。しかし、このことはまだ証明されていません。

 

塩分摂取による高血圧発症のメカニズム

 

尾前:ラットを、水のかわりに生理的食塩水を飲ませて飼っていると、高血圧が起こってきます。いわゆる食塩性高血圧です。時間はかかるが、結局高血圧を発症し、血管障害も起こってくる。そういう現象は知られているので、食塩が高血圧の発症に重要な関連をもつことは問題のないことと思っております。しかし、どうして血圧が上昇するかは、わかっておりません。

 その原因を大きく2つに分けて考えてみると、まず体液量の問題があります。過剰な食塩摂取は、体液量・循環血漿量の増加→心拍出量の増大を招いて、血圧が上昇します。一方、食塩をとり過ぎると血管壁のNa含量が増加して、アンジオテンシンUをはじめとした昇圧物質に対する感受性が亢進し、血管抵抗の増大をもたらします。血圧というものは、途中のメカニズムは複雑ですが、結局は心拍出量と血管抵抗により決定されると考えることができます。食塩摂取は、その両方に作用することが考えられるわけです。

 しかし一方で、食塩に対する感受性ということがいわれてきております。佐々木先生が、ド−ル博士のsalt sennsitiveとsalt resistantラットのことに触れられましたが、人間にも同様なことがあるのではないかといわれております。その感受性を規定している因子は、まだ不明ですが、交感神経系が関与している可能性があります。また、腎臓のNa排泄能が、この問題を解決する重要な鍵をにぎっていると考えられます。

 一方、レニン・アンジオテンシン(R-A)系との関係はどうか。食塩を過剰にとると、レニンの分泌が抑えられ、逆にno-ssltの状態にすると、レニンが非常に増加してきます。ヤノマモインデイアンのような低塩食状態では、R-A系の亢進が観察されます。が、それは生体の生理的レスポンスと考えられます。高血圧の成因論からいえば、食塩のほうがR-A系よりも一般には大事だといえるでしょう。

五島:佐々木先生は、どのようにお考えですか。

 

疫学研究における縦断的観察法

 

佐々木:血圧というものを考える場合、基本的な問題として、prevalenceというふうな、高血圧である人とない人を分けて考える立場と、広がりないし分布というように連続してとらえる立場とがあります。国際的にも、以上の2つの立場があると思われますが、最近次第に、血圧は連続して分布すると考える人が増えております。そういう立場に立って、グロ−バルに眺めると、日常摂っている食塩の量が5g以下の所では、いわゆる高血圧者はみあたりません。

 次ぎに、同一のpopulationの中で、血圧と食塩摂取との関係が証明し難いという問題はどうでしょうか。ある集団の中で、その時点でとっている食塩の量と、その時の血圧値とを、cross sectionalに比べてみて、関係を見いだせないので食塩と高血圧は関係ないと主張する人が多い。

 しかし、近年、長期にわたって縦断的(lonngitudinal)に観察する疫学研究の方法が必要といわれ、また、成績が出てきております。この方法によれば、一つのファクタ−の影響を時間を追ってとらえることができますし、他のファクタ−との相互関係を知ることができる。私たちの研究を例にとると、3歳児の血圧が、小学校に入る6歳児の血圧と関係があることがわかっております。以前にやった研究でも、中学生の血圧が、成人になったときの血圧と相関することもわかっています。また、同じ環境にずっと育っている中でも、いろいろな血圧の人がいます。血圧と食塩についていえば、夫婦の間では食塩には相関があるのに、血圧には相関が認められないが、親子、兄弟間には血圧に相関がある。したがて遺伝的な因子を考えなければいけない。

 このように、血圧というものが子供のころから、個々人にあって、そこに過剰食塩がどういふうに影響を与えてきたかという観点から、問題をとらえることが必要だと思います。

 

離乳食中の食塩の問題

 

五島:この点は、なかなか難しい問題ですね。子供の問題で思うのは、アメリカの離乳食を味わってみると、全然無塩なんですね。全く味がない。

佐々木:いえ、以前は食塩が入っていたのです。当時の表現でいえば、日本の秋田県並みの食塩が入っていたんです。そこで、ド−ル先生の仕事があって、栄養問題顧問の方が大統領に訴えた。結局、食品産業はそれに従ったのですが。離乳食が、かっては親の口にあわせて作られていたということが、最大の問題ではなかったのではないでしょうか。

五島:そうなんです。日本では、親がまず味わって、それで赤ん坊にやっているでしょう。例えば、お粥に味噌汁でおじやを作ったり、離乳食の缶詰を自分で味わって、味がないから塩をかけて食べさせている親がいるわけです。そういうことからみると、日本人は離乳食のときから塩辛いものをたべさせられれているために、大人になっても塩辛いものを好むようになったと思うんです。

 

減塩療法のとらえ方 減塩療法の降圧効果

 

五島:食事の話題が出たところで、減塩療法の問題に移りたいと思います。血圧の高い人を入院させて、1日5-6gの塩分の食事をさせますと、数日間でてきめんに血圧が下がってくるという例をしばしば見ますが、尾前先生、減塩療法の降圧効果について、どのようにお考えでしょうか。

尾前:そうですね。その前に、入院だけでも血圧が下がる例がよくありますので、安静ということを差し引いて考える必要があります。どのくらいの減塩が、本当に降圧効果をもっているのかについては、ほとんど無塩食に近いのでないとだめだという意見が、かつては多数を占めておりました。

 しかし、最近の成績をみますと、そんな厳格な減塩ではなくて、10g以下とか、7-8g程度の減塩でも、効果があるというデ−タが、あちこちで出てきております。その機序については難しい問題ですが、食塩制限を行うと、体液量が減る可能性がありますし、ただし、血中のNa濃度は変化しません。

佐々木:そうですね。ヤノマモインデイアンと我々とで、血中Na濃度は全く同じです。

尾前:これは、細胞が生きてゆくうえで、浸透圧が非常に大切なため、Na濃度が変動しないようになっているのです。腎臓がNaを排泄する能力を十分にもっているなららば、過剰なNaは拝外に出してしまい、問題はありません。しかし、腎臓のNa排泄能力が低下している場合は、Na濃度を上げないために、体液量が増加することになります。したがって、塩分を制限すると、体液量が減少し、心拍出量も低下するわけです。もっとも、減塩で血圧が下がる人と下がらない人とがいるので、問題はそれほど単純ではありませんが。

 

塩分摂取制限の問題点

 

佐々木:減塩ですべての例に血圧降下をみない点を根拠にして、だから食塩摂取と高血圧は関係がないんだという説が、かっては有力でしたね。

尾前:そうです。ですから、高血圧の成因や分類を、もっと分けてことが必要だと思います。二次性高血圧を除いたら、その他の高血圧(本態性高血圧)は一律に扱ってよいという考えはおかしい。その中にも、さまざまなタイプがあるのです。病態生理の研究でも、治療に対する反応の研究でも、高血圧症をだんだんと分けてゆく方向で考えなければいけないと思います。

五島:仮に、5gないし7-8gの食塩制限で血圧が下がったとします。そうしたら、そういう状態を維持するのは、どうしたらよいでしょうか。血圧がある程度下がったら、制限を緩和してよいものか、その辺は、どうでしょうか。

佐々木:私は、減塩療法という言葉に非常に抵抗があります。5-8gとおしゃいましたが、やむをえずその程度の減塩をやっているだけで、本当は必要最小限に低いほどよい。最近、WHOが発表したレポ−ト(Prevention of coronary heart disease;Report of a WHO Expert Committee Technical Report Series 678, 1982)では、はっきりと5g以下を勧告するといっております。

 ちょっと余談になりますが、私自身どのくらいの食塩をとっているのか調べたことがありますので、お話しいたします。

 教室の竹森幸一助教授が中心となって、”濾紙法”という、尿中排泄食塩の簡易測定法を開発いたしました。これで調べてみますと、自宅で生活しているときは7-8g、出張などで外食しますと10gを軽くオ−バ−してしまいます。かなり気をつけていないと、食塩摂取のコントロ−ルは難しい。しかし、やりようによっては、低塩を維持することは可能ですし、せっかく低塩にしたものを元にもどすのはどうかと思います。

 ただ、先程話がでたように、食塩と血圧との関係は個人的に差がありますし、食塩にあまり、レスポンスしない人に無理に制限するのはどうでしょうか。それと、嗜好の問題も無視できませんね。塩辛いものが好きな人の場合、人生がつまらなくなってしまう。ですから、大人の場合、手遅れの人という意味で、一律に制限するのでなく、食塩に反応する人について、できるだけ低いレベルでやってゆくべきだと思います。

 

塩分低摂取の食生活習慣が重要

 

五島:実際問題として、難しいですね。入院中せっかくうまくいっていても、退院したら元のもくあみになる例が多いのです。尾前先生は、どのように患者指導をなさっていらっしゃいますか。

尾前:そうですね。今の日本の状況を考えると,1日10g以下というのが実行可能な線ではないでしょうか。不可能なことをいっても、しょうがないので、まず10g以下をきちんと守らせることが大切だと思います。そして、一生を通じての習慣にすべきです。

 外国の研究者のなかには、日本人の場合、減塩を実行するのはそれほど難しくないのではないか、といわれる方がいます。つまり、味噌汁、梅干し、塩辛い漬け物などをなるべく避ければ、それだけでもかなり減塩できるのではないか、というのです。ラ−メンなど塩辛いものは汁をなるべく飲まないようにすることです。そういう習慣を子供の頃からつけることが、予防医学の上からも大切だと考えます。

五島:全く同感ですね。

尾前:60歳、70歳になってからうるさくいっても効果が上がらず、人生の楽しみを奪うことになります。

五島:私は、70歳以上の人というのは、その人の食生活が長生きになっていたのだから、食生活を変える必要はないということをいつも言っております。また、成人病の予防、高血圧でも脳卒中でもすべて、子供のうちからの食生活が一番大事なんだということも、かねがね強調してまいりました。期せずして今日のご出席の先生方も、そういうご意見ですので、その点はぜひ多くの方に認識していただきたいと思います。

尾前:おふくろの味といいましょうか、母親の料理が、子供の味覚を左右することが多いので、塩辛い食事の習慣をつけないように、子供を育ててもらいたいですね。

 

食生活の総合的指導法の必要性

 

五島:食事療法に関してですが、私、塩だけですなく、他の食事性因子に、一種の許容量というものを考えているのですよ。塩は、今10g以下というお話がありましたが、それに付随して申しあげてみますと、砂糖はどのくらいか。コレステロ−ルやアルコ−ルはどのくらいかとか。他の食事因子と合わせて考えることで、高血圧のみならず、動脈硬化や糖尿病などの予防に結びついてまいります。

佐々木:今日は、Naの問題に絞り込んでの話しておりますが、最近動物実験や臨床研究でも、NaとKの関係が注目されています。加えて、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルの問題を、総合的に循環器疾患と結びつけて考える時代になっているのではないでしょうか。それらを総合して、食生活の具体的な指導法が、今後必要になってくるのではないではないかと思いますね。(以下略)

(メデイカルトリビュ−ン 昭和57.9.20.)(吉富製薬)37−49,昭58.2.)

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