世の中が落ち着いてくると人々は長生きのことを考えだすようだ。。
戦時中特攻隊員と生活を共にしていた当時は、長生きなど頭のかたすみにもなかった。
それが生活に何かゆとりができ、いつまでも今のままでいて、孫の顔などみたくなるとは人情の常というものか。
ところが、いざ長生きしようとすると、思わぬ健康上の障害が目の前にあるのに気がつく。それは癌であり、脳卒中、心臓病だ。そして何か特効薬を心だのみにし、自分には名医がついているからいざという場合には安全だと考えている。今のところ癌については早期発見、早期治療がその対策の要点だから、名医がいることは良いことだ。だが脳卒中や心臓病は一寸ちがう。脳卒中の発作があって医者にかけつけたのではもう大半の人はおそいのである。
脳卒中や心臓病のもとは高血圧に関係があるといわれている。だから高血圧の人は普段から注意し、さらに一歩進んで高血圧にならなくてすむことを考えなければならない。
世の中には酒がすべてだと思っている人が多い。又両親が血圧が高くなって死んだから自分もその運命をたどるものとあきらめている人も案外多い。
あきらめるのは早い。酒がすべてではない。最近の学問の進歩によって、人が高血圧になってくるような、あるいは早く年とっていくような体の変化には、その人の生活、態度、習慣が関係があるということがわかってきた。
実際に高血圧でなやんでいる人もいるが、一生高血圧にはならな人もいる。この間の相違が何であるのか問題だ。その人の生活の仕方に問題があって、その人の生活の仕方が悪ければ高血圧になり、生活の仕方が良い人が高血圧にならなくてすむのではないかと考えられるようになってきたのだ。だからあきらめるのは早いし、長生きを積極的にすすめる手があると思うのだ。
生活の仕方といっても色々あるが、中でも食生活が大切なこととは皆が認めている。
”りんごは長生きのもと”と題に書いた。しめくくりをいそごう。
われわれの大学のある弘前地方は、青森県のりんご生産の中心地である。ところが東北地方に多い脳卒中も、ここではりんご生産部落を中心として働き盛りの人の脳卒中も少ないし、血圧の高い人はあまりいないのだ。この関係をどう考えたらよいのだろう。
又日本一血圧の高い秋田県の農民にりんごを毎日6個たべてもらって血圧の低下をみた実験成績もある。小さいときから1年中毎日数個のりんごを食べて育ってきた人たちには、何か長生きの秘訣がかくされているのではないか、という方向に研究が進められている。